今年で29年目を迎え、賃貸経営に関する専門家の解説や、行政ニュース、セミナー開催情報など、お役に立つ情報を掲載しております。
東京都、神奈川県などの各市町村をはじめ、首都圏主要都市の行政担当部署にも配布させて頂いております。
弁護士が注意喚起する共有持分の売却(2023.06)
共有で不動産を所有されている方は多いと思います。今月号は、「実家を姉妹2人で相続したはずなのに、いつの間にか知らない不動産会社との共有になっていた」というご相談の解決事例です。4月号でも対談に出て頂いた馬車道法律事務所の石畑晶彦弁護士、松浦ひとみ弁護士に伺います。
【父親が遺した不動産が、知らないうちに不動産会社との共有に】
関口) 今月号で取り上げるのは、或る行政機関からのご紹介で相談に来られた方の解決事例です。
遺産相続で分割協議が整わないうちに、相続人の一人が自己の法定相続分を第三者に売却してしまい、その第三者から共有物の分割請求の訴訟を起こされたという事例です。ご担当された石畑先生に内容を伺います。
石畑) ややこしい内容ですので、時系列にお話ししたいと思います。
ご相談者は2人姉妹のお姉様です。長年、お父様が所有する土地(借地)上の建物にご主人と娘さんの家族3人で居住されていました。土地は約40坪です。お父様が亡くなった後、当初は、地主さんから更新料を請求されているという相談だったのですが、暫くして父親が遺してくれた借地権付建物は、妹と共同相続した筈なのに、妹の持ち分が知らない不動産会社に移転登記されていたというのです。更に、その会社から、共有物の分割請求調停の申し立てを受けているという内容でした。
実は、相談者と妹さんは、以前から良好な関係とは言えず、長い間連絡が取れない状態にありました。その為、お父様が亡くなった後も、遺産分割について全く話が出来ないまま、それぞれ2分の1の持ち分で「共有」していたのです。2人以上で不動産などを所有している場合、民法で「共有」と言いますが、相続が発生すると相続人各人の法定相続割合で共有状態になります。遺産分割協議をせずに放置するとこの状態はかわりません。
妹さんは、不動産会社に物件を売って欲しいと言われていた様で、自分の持ち分だけでも買ってくれるというので、安易に売ってしまったのだと思います。お姉さんは、いつの間にか知らない不動産会社との共有になっていて、困惑されるのも当然でしょう。
続きは本誌にて…