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和楽(会報誌)

「和楽」はオーナー様向けに毎月発行している会報誌です。
今年で29年目を迎え、賃貸経営に関する専門家の解説や、行政ニュース、セミナー開催情報など、お役に立つ情報を掲載しております。
東京都、神奈川県などの各市町村をはじめ、首都圏主要都市の行政担当部署にも配布させて頂いております。

ご相談事例の紹介&解決へのポイント~大手建設会社との請負契約解除~(2020.02)

【対談者】

弁護士(神奈川県弁護士会)

馬車道法律事務所

松浦 ひとみ

今月号は、当協会にご相談に来られた方の問題解決事例をご紹介いたします。

 

【相談内容】

81歳で難聴のお父様(T様)が契約した大手建設会社との請負契約について、息子さんからのご相談。お父様はアパートを2棟所有。借入金が3千万円あるが、建設会社より建て替えて賃貸することで借金を返済できるといった内容の提案を受け、請負代金 約1億3千万円の契約をした(ただし、入居者の立ち退きがうまくいかなければ解除できるという口頭の約束だった)。

契約締結から数ヶ月後、息子さんに連帯保証人になって欲しいという話があり、初めて契約内容を知ることになり、某市役所に相談したところ、協会を紹介され相談に来られた。相談には当協会の専務理事 参沢淳明(みさわきよあき)、理事 関口祐輔が対応し、弁護士案件と判断の上、馬車道法律事務所の小賀坂弁護士、松浦弁護士、石畑弁護士をご紹介。今月号では、主にご担当頂いた松浦弁護士に解決に至るまでのポイントについて伺いました。

 

【弁護士から見た問題点】

手塚) どのような点が問題だと思われましたか。

松浦) 私がご相談を受けた時点で、契約金 約290万円が支払い済でした。多くの違和感と問題点のある契約だと感じました。そもそも、Tさんは、約3千万円の負債をかかえており、その借金に頭を悩ませていたにもかかわらず、なぜ、1億3千万円近いさらなる負債を負わせるのか。これは、Tさんの望んでいることではありません。それなのに、「借金を返せる」などと勧誘を続けたことは、大きな問題です。

次に、Tさんが81歳の高齢であり、判断能力の低下がみられること、難聴もお持ちで、ほとんど契約内容を理解していないこと、それは客観的にみて明らかであることも、非常に大きな問題であると感じました。また、Tさんの判断能力と影響するのですが、本件請負契約が、非常に複雑なスキームの契約であることも、また問題であると感じました。新築工事の前提として、Tさんの責任と費用負担で、現家屋の賃貸部分に居住する賃借人全員を立ち退かせた上で、本件土地の一部を売却して(その前提として、抵当権者と交渉し、売却と同時に抵当権を外してもらう必要があります。)、負債を返済、建物の新築工事を行うという非常に複雑なスキームだったのです。

続きは本誌にて…

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