皆が望む良質な賃貸住宅
ここ数年つづく都市部の地価上昇とともに戸建てやマンションの価格も上がっています。
特に東京都区部は新築マンションの平均価格が1億円を超え、これに引っ張られるように中古マンションの価格も上昇し、東京近郊エリアのマンション価格も上昇しています。

都内で新築マンションの購入を検討していた世帯層は、当初の予算をオーバーしても、今後の収入増を見込んだり、一層の節約を考えたり、夫婦での収入を合算したりして、長期の住宅ローンを組むなどして購入しています。また、都内の新築マンションを諦めて、少し離れた郊外や中古物件に住宅購入の活路を見出している人も増えています。
昔も今もマイホームは夢であり、夢のマイホーム実現のために頑張って働いている人はたくさんいます。
なんとか頑張って夢のマイホームを手に入れたと思ったら、マンションの管理費や修繕積立金が値上げされたり、大規模修繕のための一時金が必要になったり、経年劣化によって住宅設備関係の更新が必要になったり、夢のマイホームを手に入れたら手に入れたでこれもまた避けてはとおれない問題です。
住宅を購入する人たちの購入動機は、家賃を払うのがもったいないとか、資産になるとか、家族が増えるので広い家に住みたいとか、結婚したら家は購入するものだ、などとさまざまです。また反対に、必ずしも住宅の購入に拘らない人たちも世の中には一定数存在するのも事実です。
持ち家だろうと賃貸だろうと住宅にかけるお金を気にする必要のない人であったり、夫婦いずれかの親から住宅を相続する予定の人であったり、もともと購入そのものに興味がなかったり、モノを所有することに一定のストレスを感じたりする人たちなどです。
しかし、広くて良質な住宅は、分譲マンションや一戸建てのように購入しなければなかなか手に入らないということも、頑張って購入する人たちの理由の一つでもあるのです。
言い換えれば、広くて良質な賃貸住宅が圧倒的に少ないということです。どうしても賃貸事業という視点で考えると、まだまだ、いかにコストを抑えて収入をあげるかということに主眼を置いた、長期居住を想定しない効率の良い間取りや設備、外観になってしまいます。
そこで発想を変え、分譲マンションや新築戸建てに劣らぬような広くて良質な賃貸住宅が供給できれば、住まいの選択肢が増え、頑張って、背伸びして住宅を購入しようとしている人たちの受け皿になるのではないでしょうか。
当然、建築コストも上昇するでしょうから一時的な投資利回りという観点でみると優れているとはいいがたいですが、それなりの良質な賃貸住宅にはそれなりの賃料がとれ、それなりの良質な属性の人たちが居住し、結果的に長期安定経営が図れ、資産価値も維持できるということも言えるでしょう。
土地の価格があがる、建築費があがる、マンション価格や戸建て住宅価格があがる、それでも頑張って家を買う。アベノミクス前のあまり頑張らなくても家が買えた時代が懐かしいですね。もちろん目標をもって頑張ることはいいことですが。
(著者:不動産コンサルタント 伊藤)