不動産の投資利回りについて(人によって変わる)
賃貸用不動産の建築や賃貸用不動産を購入する際の指標となるのが投資金額に対してどれくらいの収益が得られるかという投資利回りです。
不動産の場合は、その特性から他の投資商品と異なり、同じ利回りでも複数の指標が用いられます。おもに投資金額に対する家賃収入の割合を単純に示す「表面利回り」と、家賃収入から賃貸経営に要する経費を差し引いた「実質利回り」の2つの指標があります。
賃貸経営にかかる費用として主なものには、土地建物の固定資産税、都市計画税や管理会社や管理組合に支払う管理費、共同住宅の場合、共用部分の水道光熱費などの経常的な支出のほかに、臨時支出として建物の老朽化にともなう修繕費などがあげられます。
したがいまして賃貸経営の投資利回りを検証する場合は経費を差し引いた「実質利回り」を指標の基準にすることは、もはや不動産投資(賃貸経営)の常識です。
不動産そのものの利回り計算としては、家賃収入から直接の経費を差し引くことにより実質利回りが計算できますが、不動産投資における意外と大きな支出として忘れがちなのが家賃収入に課される税金です。
個人の場合、不動産から得られる家賃収入から経費(固定資産税や管理費、減価償却費など)を差し引いた利益(不動産所得)に対して所得税、住民税が課されますが、不動産所得は、他に給与などの所得があれば、それらをすべて合算したうえで、その総所得金額に応じて15%から最高55%もの税金が課されます。当然、他の不動産から得られる所得や、たくさんの給与などを得ている場合は支払う税金が多くなります。このように所得に課される税金までも考慮すると、同じ賃貸用不動産でも人によって実質利回りが大きく変わることが理解できます。
このようなことから賃貸経営、不動産投資を一個人ではなく、一族単位で考えれば、所得が多く、税率が高い人の名義で建築、購入するよりも税率が低い人の名義で建築、購入したほうが一族全体としての税負担を軽減することが可能です。また、会社(法人)の場合、利益に対する税率は約30%ですので、個人の所得が多く、税率が高い場合は、法人を活用して賃貸経営をするのも税負担を軽減する一つの方法です。
さらに、万一のときに相続税が課されるような人の場合、賃貸不動産を建築、購入することによって相続税評価額が引き下げられ、将来の相続税負担を軽減することも可能ですので、相続税負担の軽減効果まで考えると、実質的な税効果を加味した利回りは高くなります。
このように、税効果を考えると、人によって実質的な利回りは変わってきますが、賃貸用不動産の建築、購入の名義は実際に資金負担した人の名義にしなければ、贈与税などの余計な税金の心配をしなければいけませんので、注意が必要です。
いずれにしましても税金は、儲けがなければ課されません。したがいまして、税金の心配よりも、まずは実際に利益が安定的に出る賃貸経営計画なのかが一番大事なポイントです。
(著者:不動産コンサルタント 伊藤)