設備故障に伴う対応について(賃貸経営)
賃貸経営するにあたり日常的に発生する業務の一つとして設備故障の対応があります。
今は単身用の貸室でも様々な設備が備わっており、半世紀前の風呂無し・エアコン無し・共同トイレのアパートと比べると驚くほどの進化です。建築してからそう期間が経っていなければ、故障する設備も少ないのですが、築10年を超えてくると故障頻度が高くなります。
コロナ禍でテレワークが一層進み、入居者によっては在宅時間も長くなっています。設備故障の迅速な対応は入居者の満足度に直結しており、この満足度が下がると転居動機の一つとなります。
【民法改正】
設備に関連する民法が改正されました。
・旧法:「賃貸物の一部が賃借人の過失によらないで滅失
した場合、賃借人はその滅失した部分の割合に応じて、
賃料の減額を請求することができる」
・新法:「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及
び収益をすることができなくなった場合において、それが
賃借人の責めに帰することができない事由によるもので
あるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができ
なくなった部分の割合に応じて、減額される」(611条1)
例えば、給湯器やエアコンなどの設備の故障は、貸主が修理する義務があります。しかし、貸主の対応が遅くなってしまうと、入居者が不便を強いられるケースもあります。その場合、改正前では入居者からの請求があった場合に貸主は対応していましたが、改正後は当然に減額の対応をする必要があります。
ただ設備故障で使用できなくなった場合の賃料の減額の程度や期間については、条文や裁判例などで明確な基準は定められていません。民法にも明確な基準はなく、実際の裁判でも事案ごとに判断されるため、判例上の客観的な基準もないのが現状です。
【実務上の運用】
では実際に設備が使えなかった分はどのくらい家賃を減額すればよいかです。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会がガイドラインを出しています。 (下表参照)★
例えば月額家賃が10万円の物件で水道が5日間使用できなかった場合、以下のように計算します。
・10万円(家賃)×30%(減額割合)÷30日=日額1,000円
5日分で5,000円となりますが、免責日数2日分を引いて
実際には3日分の3,000円が減額となります。
この改正で賃貸借契約書にどのように反映されているかを不動産業者や管理会社へ確認したほうが良いでしょう。
また故障頻度が高い設備は耐用年数を超えたエアコンや給湯器です。夏場のエアコン故障や給湯器故障で入浴ができないということは、入居者にとってはかなりのダメージです。
耐用年数を超えた設備に関しては交換予定を組んでおくと支出計画が見えてきます。まだ壊れていないのに設備を交換するのはもったいないと感じるかもしれませんが、故障してからですと迅速な対応が必要になり、交換設備の吟味や値段交渉をすることが難しくなります。故障する前でしたら幾つかの業者に見積もりを取って比較検討する余裕も出来ます。
入居者が長く住み続けたいという環境を維持し、安定した賃貸経営を目指しましょう。
(著者:見留)