心理的瑕疵を未然に防ぐ。事故物件リスクに備えるための2つの対策
入居者が室内で亡くなる事による「事故物件化」、賃貸経営者にとって大きなリスクの一つになっています。
事故物件と聞くと高齢者の孤独死をイメージしがちですが、孤独死の約4割が60歳未満の現役世代と言われており、どの世代の単身世帯も死亡事故は起こり得るものと考えていた方が良いかと思います。
そこで入居中の事故に有効な対策があるか考えてみましょう。
Ⅰ.設備選びで事故を予防する。
まずは「事故の起こりにくい部屋」を作れないかを考えてみましょう。
突然死の原因として多くを占めるのが、夏場の熱中症と冬場のヒートショックです。どちらも予測をするのは難しい事故ですが、前者は適切に室温を下げる設備が、後者には室内外の温度差を小さくする設備が設置されていれば、発生リスクを下げる事が可能となります。
これには特別な設備が必要という事でなく、エアコンと冷暖房機能付きの浴室乾燥機の設置です。それなりにコストはかかりますが、それ自体が集客力のアップにつながると考えれば導入検討もしやすいのではないでしょうか。
高齢者に限った場合では、転倒防止設備の設置です。住居内の転倒で死亡につながる率こそ1%未満ですが、転倒事故の半数以上が住居内で起こるという結果が出ている以上、決して無視できる数字ではありません。
また、床の段差を無くす工事や、廊下・階段・トイレ・浴室等の手すりの設置は、高齢者の転倒事故を防止するとともに「バリアフリー化物件」として集客力を高める効果もあります。これらは空室対策も兼ねる一石二鳥の対策ではないでしょうか。
Ⅱ.見守りサービスでリスクヘッジ
「孤独死」が、イコール「事故物件化」ではありません。そもそも事故物件とは重要事項説明の対象となる「心理的瑕疵」が生じた物件を指します。
2021年に国土交通省が発表した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では病気や生活の中で生じた不慮の事故を原因とした死亡は自然死であり、特殊清掃や大規模リフォームが必要となった場合以外は心理的瑕疵に当たらず、原則的に「告知不要」であることが明記されました。従って、その死に事件性がなく、早期発見によってご遺体の腐敗による物件の汚損を妨げられたならば、その死亡事故自体に心理的瑕疵は生じず「事故物件」にはならないという事です。
そうすると、重要になるのが入居者の体調不良や不測の事態を早期発見する為の工夫です。代表的なものが「見守りサービス」で以下の三つが代表的なものです。
①室内にカメラやセンサーを設置して入居者を見守
る機械感知式。
②メールや電話等の連絡に対する本人の返事を
もって、安否を把握する本人報告式。
③訪問員が定期訪問して本人の状況を把握する対
面確認式。
サービスによってコストや安否確認の間隔が異なる為、収支計画や入居者の属性に合わせた選択が必要となります。
尚、自治体ごとに単身高齢者むけの見守りサービスを提供していることもあるので、高齢者の入居を受け入れる場合には公的な見守りサービスとの連携も検討してみましょう。
最後に賃貸住宅の事故物件化による損失は経営の大きなリスクとなりますが、一定の確率で発生している以上、完全に回避することは不可能です。従って、必要以上に事故を恐れるだけではなく、事前に対策を行い入居者にとっても賃貸経営者にとっても安心安全な賃貸住宅を目指しましょう。
(著者:理事 関口)