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賃貸経営

良かれと思って安い家賃で

賃貸建物の老朽化に伴う建て替えを検討する際に一番頭を悩ますのが借家人(テナント・入居者)の立ち退き問題です。

 

 

 

計画的に定期借家契約などを活用して運営している場合は大きな問題はありませんが、昔からの普通借家契約の借家人の場合は、立ち退き交渉に相当の時間と費用など大きな労力が必要です。

 

結論から申し上げると、立ち退きのほとんどは金銭で解決します。

ただ、その金銭が100万円か1000万円かでは大きな違いですし、立退料の多寡によっては建て替え計画に大きな狂いが生じてしまいます。

では、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。

まず、立退料の算定、交渉の際に一番大事なポイントとなるのは賃料です。

相場より安く貸しているのか、適正な相場で貸しているのかによって、相手が求める立退料、すなわちこちらが支払う立退料は大きく変わります。

 

借家人の立場になって考えるとわかりやすいと思いますが、借家人が立ち退くには当然、移転先がなければ立ち退くことはできません。

移転先を検討する際の条件は、基本的に賃料や広さ、環境など現在と近い物件となります。同等の物件、移転先候補がそれなりにあれば、立ち退きも立退料の交渉も難易度が低くなりますが、同等の物件が周辺になければ立ち退きは難航します。

その際に特に大事なポイントとなるのが現在の賃料です。

適正相場で貸している場合と、相場より安く貸している場合とでは、後者の方が移転先候補を見つけるのに苦労します。

借家人は現在支払っている安い賃料をもとに生活をしたり商売をしたりしています。現在貸している家賃が相場に比べ安すぎて、同程度の賃料の物件が見つからない場合は、移転先の賃料と現在の安い賃料との差額の一定期間分を立退料として要求される可能性が高くなります。

 

よく、「相場より安い家賃で貸していたから立ち退きにも応じてくれるでしょう」という大家さんもいらっしゃいますが、実はそうではなく、相場より安い賃料で貸していたから、同等の安い賃料の移転先が見つからず、結果的に立退料が高額になるのです。

良かれと思っていたことがまったくの逆効果ということにもなりかねません。

 

したがいまして、前回もお話ししましたが、賃貸経営においては「相手の足元をみる」とまでは露骨ではなくても、定期的に賃料を見直し、適正賃料を維持することが、将来の立退料負担を軽減することにもつながり、安定経営の基礎となります。

もっとも借家人の入れ替え時などに定期借家契約を導入する、もしくは更新時に定期借家契約に切り替える等の検討が重要なのはいうまでもありません。

 

(著者:不動産コンサルタント 伊藤)

 

 

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