インボイス制度導入② ~期間限定の経過措置~
◎インボイス制度導入後の「経過措置」
令和5年10月から始まるインボイス制度ですが、前回はテナントや駐車場、太陽光発電など、事業系賃貸収入における影響についてお伝えしてきました。
制度開始以降インボイスを導入していない貸主から賃貸を受ける借主は、賃料に対する消費税が消費税算定上、経費として計上できないため、その負担を鑑み、貸主は適格請求書発行事業者(課税事業者)になるか、消費税分を値引きして借主の退去リスクに備えるか要検討というお話でした。
ですが、この消費税計算方法は、導入日からすべてが本格的に効力を発揮するわけではありません。
急激な変化を緩和する観点から、事業者の負担を少しでも軽減するため、下記の期間において適格請求書発行事業者以外の事業者からの課税仕入も一定割合を控除可能とする段階的な経過措置が設けられています。
◎事業者が経過措置期間中に検討したい「簡易課税制度」の利用
消費税の課税事業者になるのは、原則2年前の課税期間、課税売上が1000万円を超える場合ですが、この基準に満たなくても「簡易課税制度」を利用し課税事業者となる届出をすることも可能です。
簡易課税制度とは、仕入れにかかる消費税に関係なく、売り上げにかかる消費税だけで、納税する消費税を計算するというものです。
事業者(ここでは貸主)自身の消費税の計算をする上では特定の条件下で、この制度の選択が認められています。1)適用期間の2年前の課税期間の課税売上が5000万円以下 2)適用を受ける課税期間の開始前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出。簡易課税制度の選択基準としては、事業者(貸主)自身が支払った消費税が、売上×一定割合(不動産賃貸業は40%)で計算した金額を下回っていれば簡易課税制度が有利に働くことになります。ただし当該選択届出書の提出以後2年間は強制適用となるため、修繕等で思わぬ消費税の支払いが発生すると不利になる可能性があります。
◎適格請求書はどのように記載する?
令和5年10月以降、インボイス登録を行った事業者は適格請求書(インボイス)を発行しその写しを保存する義務が生じます。ここからは適格請求書の記載内容とポイントについて詳しく見ていきます。
記載内容は現行の一般的な請求書とそれほど変わりはありません。以下が求められる記載事項です。A)適格請求書発行事業者の氏名または名称及び登録番号 B)取引年月日 C)取引内容 D)税率ごとの対価の額及び税率 E)税率ごとの消費税額 F)書類の交付を受ける(=請求書を渡す)事業者の氏名または名称
では、家賃のように、逐一請求書を発行せず口座振込等により支払いが行われる取引はどのように適格請求書を発行・保存すればいいのでしょうか。
これは国税庁より回答が出ており、「B)取引年月日」以外の内容を記載した契約書を締結保存し、通帳(取引年月日の事実を示すもの)を併せて保存することとなっています。またインボイス制度導入前に締結した契約書では適格請求書発行事業者としての登録番号の記載がないことが多いと思いますが、貸主が借主に対し、登録番号を記載していない旨の通知を出していれば問題ありません。
次回はインボイス制度の最終回、相続との関係を取り上げたいと思います。
▽インボイス制度導入③ ⇒https://www.jinushi.gr.jp/support/souzoku20230306-2/ ▽動画「インボイス制度の概要」⇒https://youtu.be/J6IjT2PeGIQ
▽日本地主家主協会について ⇒https://www.jinushi.gr.jp/ ▽賃貸経営に関するその他記事 ⇒https://www.jinushi.gr.jp/chintai/
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(著者:税理士 高原)