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賃貸経営

不動産の価値から考える賃貸条件の変更とその順番

昨年来続くコロナ禍による飲食店の自粛要請、テレワークの推奨によって店舗や事務所を借りているテナントはもちろん、オーナーも疲弊しきっています。

オーナーには賃料減免や猶予の要請が多く寄せられ、オーナーも現状を鑑みると、要請を受けざるを得ない状況が続いています。誰が悪いわけでもない本当に頭の痛い問題です。

 

 

テナントもオーナーも互いに協力して頑張ったとしても、力尽き、止む無く撤退せざるを得ないケースも出てきております。このような状況下ですから、なかなかこれまでと同条件で募集するのは難しいのが実情です。どのようにすれば新規テナントが物件に興味をもつか、まずは経済的な条件を検討しなければなりません。

 

賃貸の経済的条件は主に、保証金(敷金)、礼金(償却)更新料などの一時金と、毎月の賃料に分けられます。

募集条件を検討するには、一時金を減額するか、賃料を減額するか、といういずれかの方法がありますが、先ずは一時金を減額する。次に賃料を減額する。という順番で検討することが重要です。

経営の安定を考えれば、一時金よりも毎月の収入のほうが中長期的に見て有効ですし、借入金を利用している場合はなおのことです。

また、賃貸物件の価値は収益還元価値、すなわちその物件から1年間にどのくらいの賃料収入が得られるかが基本的な指標となっておりますので、賃料が下がるとそれだけ物件の価値は下がり、反対に賃料が上がると物件の価値は上がる、という関係になっています。このようなことから一時金は減額しても、賃料はなるべく下げないほうがよい。ということが言えます。

 

そうはいっても、そうそう簡単にテナントが見つかるとも限りません。

このような場合は賃料減額を検討する前に、フリーレントの活用を検討することが重要です。フリーレントとは一定期間の賃料を免除するというものです。かつてのリーマンショックやオフィス大量供給による需給バランスの悪化によるオフィス不況など、不動産市況の低迷期に多く活用される手法です。不動産ファンドなどを運営する不動産運用のプロは賃料減額による物件価値の低下を回避するために、フリーレントを多く活用します。ケースによっては3か月から6か月程度賃料を免除することもありますが、賃料を減額することはほとんどありません。このように資産価値の維持を前提に不動産不況下での賃貸条件を検討するには、まずは一時金の検討、次にフリーレントの検討、最後の手段として賃料の減額の検討という順番で考えることが必要です。

 

ただし、不動産価値の維持とは言っても、実は実態に少し飾りつけを施した表面上の価値であることを忘れてはいけません。反対に言えることは、不動産もちょっとした飾りつけの仕方、化粧の仕方で価値の見せ方、見え方が変わるということです。

ますます不透明で雑多な情報が溢れる世の中、飾りや化粧に惑わされず、本当の価値を見分けられる人間になりたいものですね。

 

(著者:不動産コンサルタント 伊藤)

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