新・借地借家を巡る諸問題⑤_区分所有マンションの管理・建替え
1 はじめに
賃貸経営をする場合、保有する一戸建てや一棟のアパート・マンションの各居室を賃貸するだけではなく、保有する区分所有マンションの居室を賃貸している場合も多いと思います。
区分所有マンションについては、区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)等の特別法の適用があり、一戸建て等賃貸の場合とは異なる法律問題が色々と出てきますが、今回は、区分所有マンションの管理・建替えについて取り上げたいと思います。
区分所有マンションを保有する場合、その管理・建替えは、避けて通れない重要問題といえますので、この機会に整理していただければと思います。
2 区分所有法の定め
⑴ 区分所有マンションの管理
区分所有マンションの一棟は、「専用部分」「共用部分」に区別されますが、その管理等を行うため、区分所有者全員で管理団体(管理組合)が構成され、原則として、区分所有者及び議決権(「専用部分」の床面積の割合により決定)の各過半数の賛成による決議に基づき、管理等が行われることになります。
そのため、「共用部分」の管理は、原則として、区分所有者及び議決権の各過半数による決議に従って行われることになりますが、「共用部分」の形状又は効用の著しい変更を伴うような大規模改修を行う場合には、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成が必要(区分所有者の定数を規約により過半とすることは可)とされています。
⑵ 区分所有マンションの建替え
区分所有マンションの老朽化等により建替えが必要となった場合、区分所有者及び議決権の5分の4以上の賛成があれば、建替えが可能となります。そして、建替え決議に賛成せず、その後も建替え決議の内容による建替えへの参加を拒否した区分所有者に対しては、その区分所有権及び敷地利用権を、決議に賛成した区分所有者等へ時価で売り渡すべきことを請求できるものとされています。
なお、建替を前提としない建物の取り壊しを行う場合は、民法の共有物の変更(処分)に関する規定に基づき、区分所有者全員の同意(賛成)が必要となります。
3 その他特別法の定め
⑴ 耐震改修促進法
昭和56年以前の旧耐震基準で建築された建物等、耐震性が不足した老朽化建物の「耐震改修」の促進を目的とした耐震改修促進法(建物の耐震改修の促進に関する法律)が、阪神・淡路大震災後の平成7年に施行されました。そして、同法の平成25年改正において、耐震改修が必要である旨の認定を都道府県知事や地区町村長から受けた区分所有建物については、大規模改修についても、区分所有者及び議決権の各過半数による決議により決するものとされています。
⑵ マンション建替法
マンションの建替えに関しては、マンション建替法(マンションの建替え等の円滑化に関する法律)という特別法が平成14年に施行されており、建替事業の円滑化をはかるための各種規定が設けられています。そして、同法の平成26年改正において、耐震性不足により「除却」が必要と認定されたマンションについては、区分所有者、議決権及び敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上の賛成により、建替えのために当該マンションとその敷地を売却する旨の決議をすることができるとされています。
4 おわりに
以上のとおり、区分所有マンションの管理・建替えに関しては、区分所有法の他にも特別法が定められ、今回言及した規定以外にも多くの規定が定められています。区分所有マンションの管理・建替えを計画する際には、これら特別法にも考慮する必要が出てくる場合がありますので、この点ご留意いただだければと思います。
(著者:弁護士 濱田)