不動産オーナーの8050問題①
◎不動産オーナーにも8050問題発生中。
8050問題とは近年、顕在化してきた長期的な引きこもりに関する社会問題をいいます。引きこもりの子をもつ家庭が高齢化し、80代の親が50代の子の面倒をみるという体力的にも経済的にも苦しい状況の中、社会から孤立してしまうという深刻な問題です。
しかし、ここではその本来の意味ではなく、同様の年代における不動産オーナーの親子間ギャップの問題についてお話しします。
◎不動産オーナーとっての8050問題とは?
「突然、不動産管理をしなきゃならなくなって、何が何だかわからなかったよ」。賃貸不動産を持つ親御さんが亡くなり(あるいは介護状態になり)、管理を引き継いだお子さんからよく聞かれる言葉です。
「駐車場を借りてるって人が突然お金を持ってきて、『これ来月分の賃料ね。台帳にハンコ頂戴。』なんて言うんだよ。それが月末に何人も。こっちは全部で何人に貸してるのかもわからないし、本当にその人の言う金額で合ってるのかもわからない。こっちは仕事もあるから妻に対応をお願いしたけど、買い物にも行けないって困ってた。こう言っちゃなんだけど、正直、不動産を残された自分たちは迷惑。親父は最後まで何も教えてくれなかったし、書類も整理してくれてなかったんだから」。
これが、私の考える不動産オーナーの8050問題。不動産から隔てられていたお子さんが突然、不動産管理(賃貸経営)の世界に放り込まれて、右往左往している場面のなんと多いことか。
◎どうして不動産オーナーの8050問題は発生するの?
- 借主さんと現オーナー(=親)との関係が長い間、良好なのであえてそれを変更させる(=子供に管理させる)必要がない
- 子供側は日常生活に忙しく、実家の不動産管理に回す時間的余裕がない。(両者の住まいの問題【別居が通例(=親の不動産管理のためには実家に通う必要がある】もある)
- 親が自分の懐具合を子供達に見せたくない。(理由は様々。兄弟のバランス。配偶者(嫁や婿)の存在など)そもそもまだ見せる必要があると思っていない。
など様々な理由があると思います。
◎果たしてそれでよいのでしょうか?
不動産そのものについては、ほとんどのご家族が「親から子へ受け継ぐべきもの」とお考えです。承継にかかる税金などのコスト削減に意欲的な方もたくさんいます。ところが、不動産に関するさまざまな「情報」の引き継ぎとなると、その必要性を見過ごしている方が多いと思います。
しかし、情報が伝わっていないことで被る不利益は確実にあります。賃貸経営は「自動的にお金が入ってくる仕事」ではありません。仲介や管理会社との連携、空室対策、入居審査、トラブル対処、原状回復などの入退去に伴う一連の業務をこなす一方で、中長期的な建物修繕やリノベーションも計画実行する必要があります。慣れない人が手探りで行っていたのでは何ごとも後手後手になり、余分な費用もかかりかねません。
ではこの問題を防いでいる方はどのようにしているのでしょうか?それはまた次回で!
(著者:税理士 高原)