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賃貸経営

売りやすい活用とは(契約形態を考える)

賃貸経営のキーワードは「分けやすく」「売りやすく」「早期回収」という点が重要である。というお話を前回させていただきました。今回はその一つである「売りやすく」をもう少し掘り下げて、「売りやすい賃貸経営」について考えてみたいと思います。

 

賃貸経営は賃料収入を得ることを第一とし、将来、売却することまで視野に入れて計画することは、ほとんど無いようです。しかし、相続税納付や遺産分割などの事情により売却せざるを得なくなった場合に、売りやすい物件か売りづらい物件かによって換金のタイミングを逃してしまったり、目論みどおりの金額で売却できなかったりなど不利益を被る可能性があります。

 

では、売りやすい賃貸物件とはどのようなものでしょうか。その前にまず、売りやすい不動産について考えてみましょう。売りやすい不動産の代表例は更地です。その理由は、土地の上に何の制約(負担)もなく、購入者が自由な用途で利用できるという事です。住宅に限らず、アパートでも店舗・事務所でも駐車場でもかまいませんので、購入者のターゲット層が広いということも言えます。その点から賃貸物件を考えてみますと、賃貸物件は土地上の建物および建物の賃借人という利用上の制約(負担)があることから、おのずと賃料収入を目的とした投資物件という用途に限られてしまします。この場合の購入者はある程度の資産や収入を背景にした層に限られてきます。

 

この事から考えますと、売却しやすい賃貸物件とは、制約(負担)が少なく、購入者層が広がる可能性のあるものということが言えます。具体的には賃借人による制約(負担)を少なくするための契約形態の検討が必要です。賃借人は借地借家法で保護されており、正当な事由が無ければ退去を求めることができません。また、明け渡しには多額の立退き料も必要になります。しかし「定期借家契約」を締結することにより、正当な事由なく期間満了とともに明け渡しを求めることが可能となり、賃借人による利用上の制約(負担)を軽減することが可能となります。この方法により、一定期間後は購入者の自由意思での土地利用が可能となることから、投資目的以外にも購入者層の幅が広がることにつながり、売りやすさが増すといえるでしょう。もちろんオーナー自らが定期借家契約による期間の満了とともに明け渡しをもとめ、更地で売却する事も可能となります。要するに定期借家契約の導入によって物件の価値が高まると考えてもいいでしょう。

 

ただし、定期借家契約は当事者の合意が必要であり、通常の賃貸借契約からの変更は難しいため計画段階からの導入を検討することが必要です。特に店舗や事務所などに賃貸する場合は明け渡しを求める際に多額の立退き料(営業補償など)が必要となるため、将来の売却、建替えなどの可能性までを考えると、定期借家契約によって将来のリスクを軽減することが重要です。

 

令和となり、平成の30年間もあっという間に過ぎてしまいました。これから新たに賃貸経営をはじめても、気が付いたら20年、30年すぐに経過しています。分けやすく、売りやすく、早期回収という視点で今一度、賃貸経営を見つめなおしてはいかがでしょうか。

 

(著者:不動産コンサルタント 伊藤)

 

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