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賃貸経営

家賃や地代の回収漏れについて【貸倒損失】

◎つい先月、こんな質問を寄せられた方がいらっしゃいました。

「家賃の貸倒に備えて(確定申告で)貸倒引当金を設定したいんだけど、経費に認められる??」

答えは残念ながら「原則としてNO」です。

空室知らず、回収も順調なので「なんとか節税を」と考えられたのか、部屋は埋まっているが回収漏れが著しいので「せめて税金ぐらいは」と考えられたのか、いずれにしても(残念ながら)良いアドバイザーに恵まれていないのかな?と感じたご相談です。

今回は家賃の回収不能を取り上げたいと思います。

 

◎貸倒損失

発生しては欲しくない家賃や地代の回収不能ですが、万が一起きてしまった場合には(個人事業の場合)事業規模によって処理が異なります。

⑴事業的規模:損失が計上した年分に費用計上

⑵非事業的規模:収入計上年分に遡って還付請求(貸倒事由の発生日の翌日から2ヶ月以内)

 

法人の場合には事業的規模や非事業的規模、という考え方がそもそもないので全て費用(正確には損金)計上です。

但し、この「回収不能が発生した」という事実を税務署に認めさせるのがかなり難しいです。

税法上は回収不能(「貸倒」といいます)を認める事由が限定列挙されています。

イ)債務者に係る会社更生法や民事再生法などの決定により法律上、債権が消滅したとき。

ロ)債務者の債務超過の状況が相当期間継続し、滞納家賃の回収が出来ないと見込まれる場合において、その滞納者に対して書面で債務免除の通知を出したとき。

ハ)債務者の資産状況、支払い能力からみてその全額が回収できないことが明らかになったとき。

 

法律上の債権消滅は証明しやすいですが、その他の二つの事由は外部から見てわかりにくいので、せめて以下のものは用意するようにしたいです。

➀家賃入金の履歴

②督促状況の記録

③滞納者の資産状況の聞き取り記録

④回収努力をしたことがわかる記録

⑤内容証明郵便で督促状を送ったが受取人不在などで返送された記録

 

ちなみに保証人がいる場合には保証人から回収できないことを明らかにしないと貸倒損失は認められません。

 

◎貸倒引当金

冒頭のご質問の答え→「原則として」NOなので例外があります。

例外として次の場合には一定の金額まで、貸倒引当金の計上が認められています。(個人事業者の場合には事業的規模の場合に限られます)

⑴会社更生法や民事再生法などの更生計画等の認可決定などにより、弁済が長期間猶予される金額がある場合

⑵債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、営む事業に好転の見通しがないこと、債務者に災害などの事由により多大な損害が生じていること等により、取立ての見込みがない場合

⑶会社更生法や民事再生法などの更生手続き等開始の申立などがあった場合

必ず計上年分には明細書を提出しなければならないことや、計上翌年分には洗替処理(一旦、リセット)が求められていることなども注意事項です。

 

◎回収不能にならないようにすることが最重要

貸倒損失だとか貸倒引当金で悩まなくて良いように入居審査は不動産会社さん任せにせず、オーナーご自身で最終判断するということと、ですが不動産会社さんは重要パートナーなので普段から関係を密にしておく、この2つがまずは大事ではないかと思います。

上手くいっている私共のお客様(オーナー様)は絶大な右腕(不動産屋さん)を味方につけている方が多いように思いますよ。

 

・賃貸経営のお悩みに関するその他記事 https://www.jinushi.gr.jp/chintai/

・日本地主家主協会について https://www.jinushi.gr.jp/

 

 

(著者:税理士 高原)

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