地積規模の大きな宅地の評価について
今回は、地主さんならご存じの方も多い、“広大な土地”の相続税評価について。
2018年以後の相続から適用開始された「地積規模の大きな宅地の評価(以下、『規模大評価』)」です。
これに伴い廃止された「広大地評価」とは別物ですが、適用できれば土地評価額の軽減=相続税の軽減になる点は同じです。
◎規模大評価適用のためにできること
規模大評価の適用要件をまとめると以下の通りです。
- 【面積】三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の地積の宅地であること。
- 【地区区分等】土地の所在する場所が普通住宅地区、普通商業・併用住宅地区、倍率地域のいずれかで、市街化調整区域(都市計画法第34条10号または11号規定の区域を除く)でないこと。
- 【用途地域】土地の所在する場所が工業専用地域でないこと。
- 【容積率】指定容積率が400%(東京23区は300%)未満であること。
- 【その他】「大規模工場用地」(一団の工場用地の地積が50,000㎡以上のもの)でないこと。
以上のうち、納税者側でコントロールできる項目はあるでしょうか? ②は国税局が、③と④は地方公共団体が設定するので、意図的に差配することはできません。①の面積も、一見、操作できないように思えます。規模大評価をするには、たまたま要件に合致することを祈るしかないのでしょうか?
実は、①に関してはそうでもないのです。相続税の財産評価において、土地の評価単位は原則として次の3つの観点から判断します。
■地目ごとに評価…田、畑、宅地など、相続開始時点の実際の地目に従って地目ごとに評価する。
■利用単位ごとに評価…自宅、アパート、底地など、同じ地目であっても土地の実際の利用者が異なる場合には利用単位ごとに評価する。
■取得者ごとに評価…同じ地目で一団の土地であっても取得者が異なる場合には取得者ごとに評価する(不合理分割の例外あり)。
つまり、土地の用途や利用状況等を変えることで、意図的に500㎡以上や1,000㎡以上の土地を作り出せる余地があるということです。
◎容積率またがりに要注意
ここで落とし穴になりやすいのは④の容積率です。
容積率とは建築物の延床面積の敷地面積に対する割合をいいます。規模大評価の判定で使うのは指定容積率(都市計画法で定められる容積率)ですが、1つの土地が2つの指定容積率(敷地の一部は400%、残りは300%など)にまたがっている場合、各々の面積により容積率を加重平均して適用される容積率を求めます。
面積要件を満たすために評価単位を見直したとき、容積率も変わってくる可能性があることに注意してください。
◎最後まで適用をあきらめない
規模大評価の新設からもいえるように、相続税の土地評価はより簡易的な方向に変化しつつあります。判定が容易になるのは良いことかもしれませんが、それでもやはり、知識のある人とない人とでは差が出ます。
規模大評価も一見、適用不可に見えても、見方を変えれば適用の可能性が出てくるかもしれません。あきらめずに検討してみましょう!
(著者:税理士 高原)