税務調査の秋! 相続税の税務調査でよくあるご質問4選
◎自己申告納税制度の柱「税務調査」の役割
税務調査は、税務署が納税者(法人/個人)の申告内容が正しいかどうかを確認するために行う調査のことをいいます。
税務調査の最大の目的は「公平な税負担の確保」です。もし税務調査が行われなければ脱税行為が蔓延し、無申告者の増加によって、日本経済の信頼性は低下の一途をたどる恐れがあります。そうなれば、国としては、全税目を固定資産税のような「賦課課税方式」にせざるを得えません。賦課課税方式は、徴収の効率化という面ではメリットもありますが、税の算出過程においては不透明な部分もあり、納税者にとって重税感を感じるデメリットも少なくありません。そのため、納税者自身が税額を算出し納税する「自己申告納税制度」を維持することが望ましいといえます。
今回は、自己申告納税制度を支える大事な柱でもある「相続税の税務調査(任意調査の実地調査)」のよくあるご質問を4つご紹介します。
◎ウチは税務調査の対象になるの?
相続税の申告が完了すると、必ずといっていいほど聞かれるのがこのご質問です。それに対する回答は個々によって異なるため一概にはいえませんが、代わりに国税庁のデータをご紹介します。
まず令和5年12月に公表された令和4年度 相続税申告件数は、189,138件(相続税額のない申告書も含む)です。期間は完全に一致していませんが、同じく令和4事務年度の実地調査件数は8,196件でした。比較すると双方の割合は約4.3%です。「おや?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、昨今の税務調査は来訪ではなく電話などの「簡易な接触」とよばれる調査が急増しており、その数は15,004件(約7.9%)にものぼります。合計すると約1割強が税務調査の対象です。これはコロナ期間を除き、ほぼ毎年同じ割合です。また、実地調査では非違率(申告の誤りがあった確率)が約85%もあり、これにより以下の3つの質問につながります。
◎税務調査(実地調査)=修正申告?
税務署は申告漏れや脱税の確証を掴んでから実地調査に入るケースがほとんどです。そのため、実地調査になった場合は、修正申告の可能性が高くなります。ただし、是正・改善を求める指摘事項のないケースも約15%あり、対応次第で結果が変わるといえます。
◎当日は何を聞かれるの?調査時の注意点を解説
昔、公開された映画『マルサの女』などのメディアの影響もあって、税務調査に対して不安や恐怖心を抱かれる方もいらっしゃいますが、任意調査の段階で国税査察官が自宅や会社に押しかけることはまずありません。納税者の同意のもと財産形成に関する質問が行われ、被相続人や相続人の生い立ちや日常生活について質問されます。もし申告内容や財産の動きに矛盾が生じた場合は、それに対する説明が必要となります。注意する点としては、「決して嘘をつかないこと」これに尽きます。税務署の質問に対して明確な回答ができなければ「わかりません」と答えてまったく問題ありません。
◎過大評価/過大納税をしたらどうなる?
相続税が自己申告納税制度で成り立っている以上、仮に納税者がある減額規定を適用していなかったとしても、税務署は「その減税規定を適用しないことが正しいと納税者が判断した」と解釈し、過大評価/納税を指摘することはありません。税務調査は確かに負担もありますが、このような事態を避けるためにも税務調査対策も含めてセカンドオピニオンは大切ですね。
(著者:税理士 高原)