離婚と相続②(離「婚」をするなら離「縁」も忘れることなかれ)
◎離婚と税金② 財産分与時の注意事項
前月に続き、離婚と税金(・相続)に関するお話です。
財産分与時に協議となるのが、夫婦協力財産の代表格ともいえる自宅の分割です。そもそも不動産の分割方法は、相続時の遺産分割と似ており、二つの方法があります。
①代償分割(一方が自宅を受け取り、一方に金銭を支払う)
②換価分割(売却代金を二人で分ける)
特に自宅は、残債状況や時価(売れる価格)、その時の相互の生活状況によって分割方法が変わってきます。
前回お伝えしたとおり、不動産の財産分与に譲渡所得税が発生する可能性を踏まえると、夫婦間の自宅の移転に設けられている特例では、以下のものが使えそうです。
しかし、贈与税や譲渡所得税の回避目的と判断された場合は課税対象となるため、実態を踏まえて特例を使うには注意が必要です。また、不動産の財産分与は登録免許税も課税されますが、不動産取得税は発生しないケースもあります。
◎離婚で消失する相続権
離婚をすれば夫婦でなくなりますので当然、夫婦間の相続権はなくなります。ただ、これは民法上の財産の話。民法上の相続手続き外にある生命保険金は保険契約上の受取人に対して支払われます。通常であれば、離婚時に財産の洗い出しが行われるはずですので、受取人の変更手続きを忘れてしまうというのは考え難いです。しかし、可能性はゼロではありません。※相続税法で定められている「500万円×法定相続人の数」の非課税も受けられません。
◎離「婚」と離「縁」は別物です
これは、私どものお客様に起こった養子縁組(婿養子や息子の嫁を養子としていた場合)にまつわる実際のお話です。夫のDVが原因で夫婦関係がもつれ、どうにか離婚が成立したその矢先、相続が発生。遺言書がなかったことから、遺産分割協議の必要性が生じました。ただ、この前夫が実は、相続税対策目的で妻の親と養子縁組をしていたのです。離婚は成立したものの亡くなった養親とは「離縁」をしていなかったために相続権が発生し、元妻(長女)とその兄弟は、離婚した前夫を含めて遺産分割協議をする必要に迫られたのです……。
◎専門家でも難しい離婚と養子縁組解消の関係
当然、当人同士で折り合いをつけることはできず、弁護士を交えての分割協議となりました。互いに顔を合わせることはなかったものの、いわゆるハンコ代(代償金)を要す結果となり、痛手を負った協議であることは想像に難くありません。迂闊だったと言えばそれまでですが、専門家であっても離婚成立=養子縁組離縁成立と勘違いしたり、養子縁組による相続権成立のメリットばかり注視して、リスクを過小評価したりするケースも見受けられます。「離縁」は離婚と同様、離縁届を提出することで成立しますが、そもそも相続税対策などの目的だけで安易に養子縁組を結ばないことが肝要です。
離婚の話からやや脱線してしまいましたが、一度は夫婦でいることを誓った仲ですから、末永い目で考えてほしいと離婚相談をいただくたびに思います。
(著者:税理士 高原)