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相続

司法書士の事件簿~第6回「民事信託~他の制度との関係」

【「民事信託」とは?】

今回は、「民事信託」についてお話ししようと思います。

「民事信託」とは、「信託法」によって規律されるものですが、信託法の改正によって、信託が家族内で利用しやすくなったことで、社会的に注目を集めるようになりました。「民事信託」と似た言葉として「家族信託」という言葉もありますが、どちらの言葉も法律用語ではなく、実質的には同じものとお考え頂いて結構です。

 

そして、「民事信託」とは、簡単に説明すると、不動産や預貯金などの特定の財産を、自分自身(委託者)が、信頼できる人(家族・受託者)に託して名義を移転し、その者(受託者)が信託契約で定めた目的に従ってその財産の管理・処分を行い、それによって生じた利益をそれを享受する者(受益者)に与える制度(契約)です。

「民事信託」では、上記委託者と受益者とが同一であることが、贈与税との関係で一般的です(自益信託)。

 

 

 

【後見制度との比較】

後見制度は、被後見人(本人)の身上監護(生活や健康の維持、療養などに関する行為。例えば、施設入所契約)と財産管理を目的としたものですが、「民事信託」は委託者(本人)の財産管理及び財産承継を目的としたものです。

つまり、「民事信託」は、身上監護を目的に含まないという点において、後見制度とは異なるということになります。

この点、世間では「成年後見制度は問題が多い制度で、民事信託こそが有効だ」というような言葉を耳にすることもあるかと思いますが、これは正しい理解ではありません。確かに、「民事信託」は成年後見より柔軟な制度であることは確かですが、両制度は排斥し合うものではなく、相互に補完し合う制度です。

その意味では、最初から「民事信託」ありきで話を進めるのではなく、ご本人の希望を明確にしたうえで、他の制度(任意後見・遺言・死後事務委任)も視野に入れながら、適切なスキームを構築していくのが最善だと考えます。

 

【遺言との比較】

遺言の効力発生時は、遺言者の死亡時です。一方、「民事信託」契約は、原則として契約時に効力が発生しますが、この契約に委託者の死亡を停止条件又は始期として効力を発生させると規定すると、この信託契約を遺言の代わりとして用いることができます(遺言代用信託)。これは、財産承継の時期についても、同様に解することができます。

また、後継ぎ遺贈(「自分の死後は妻に、妻の死亡後は長男に」という形で、遺言で先々の財産承継まで定めておくこと。)については、一般的に民法上は無効と考えられています。一方、「民事信託」契約については、受益者連続型信託によって、後継ぎ遺贈と同様の役割を果たすことが可能です。これも、「民事信託」が柔軟な制度であることの現れといえます。

 

【「民事信託」への司法書士の関与】

「民事信託」への司法書士の関与については、信託に関するコンサルタントとして関与するのが一般的です。「民事信託」は、成年後見、会社法、相続等の実体法から信託の登記登録等に関する手続法まで司法書士が得意とする分野に係わる制度といえます。

もっとも、信託に関する税務については、不明・不合理な点や流動的な面もあることから、税理して緊密な連携をとり、協働体制を確立していくことが大事だと思います。

 

(著者:司法書士 大谷)

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