相続対策で後悔しないために 「お客様に伝えたい3つのこと」
◎路線価発表、いざ相続対策!その前に……
今年も7月1日に令和6年の路線価が発表されました。路線価の基となる地価公示は、全国平均で前年比2.3%、住宅地では2.0%、商業地では3.1%の上昇とバブル期以降では最大の伸び幅となりました。
景気が緩やかな回復傾向をみせるなか、相続税路線価や固定資産税路線価も上昇を続けています。路線価の発表をうけ、読者の皆さまの中にもさまざまな相続関連業者から相続対策の提案を受けたり、自ら思い立って相続対策の検討や見直しを始められた方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、相続対策で後悔しないために、ぜひ知っておいていただきたい3つの大切なポイントをご紹介します。
◎危険!「ザックリでいいから相続税額を出して」
相続対策をご依頼いただく際、私たちが最もよく耳にするのがこの言葉です。
「試算の段階で費用や時間をかけたくない」「傾向と対策がわかればそれで十分」。そんなお気持ちからくるご要望かもしれませんが、果たして本当にそれで良いのでしょうか。依頼者からのご要望を受けてザックリと試算を行ったあとは、それをもとにさまざまな提案や検討が行われ、実行・不実行を決めていきます。当然、そのザックリ試算と本来の相続税額には誤差が生じているため、実際に相続が発生すると、過大な不動産評価に基づいて売却しなくてもよい土地を手放したり、建てる必要のない建物を過剰に建てたりと、大切な資産を目減りさせているケースをよく見かけます。
相続が発生する前と後では施せる手も大きく変わってきます。費用を払ってでも専門家に知恵を求めるならば、「相続前こそ!」。それが、納得のいく相続を実現するための第一歩です。
◎忘れてはいけない「相続」と「介護」
年齢を重ねれば歩行がおぼつかなくなり、食べることもままならなくなって、次第に介護を要するようになります。
それにもかかわらず、介護期間を相続対策の検討材料に加えず試算を行い、遺産分割方針を決め、それに基づいて対策を立ててしまう。すると、介護負担と相続分配のバランスがうまく取れず、家族間で不満や不公平さが募ります。そのモヤモヤが、その後の家族関係の形成に大きな影響を及ぼすことを、実はプロでも見逃しがちです。
一方、親(子)が相続対策に乗り気でないケースもありますが、その場合も解決のキーワードとなるのは、やはり「介護」です。「介護の先に相続がある」という現実は、世界屈指の長寿大国・日本だからこそ(相続の世界からは見えにくい)壁なのかもしれません。
相続発生までの介護期間を親子でどのように過ごすのか、介護負担の分担をどのようにすべきか、近い将来直面する現実的な問題からまず話し合うことが、相続対策の重要なポイントといえます。
◎相談相手の「専門」を見極め、自分の意向を明確に伝える
「〇〇士だから相続に詳しい」「国家資格者だから安心」と思われがちですが、それは誤解です。
医師にも内科、外科といった専門があるように、税金の分野にも相談する内容に応じて専門家を使い分ける必要があります。場合によっては、普段お世話になっている相談相手から、より適した専門家を紹介してもらうことも視野に入れましょう。ベストな相談相手を見つけ、その人脈を家族間で共有しておくことが、資産を守り継ぐための相続を実現する大切な手法ではないかと思います。
(著者:税理士 高原)