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相続

司法書士の事件簿~第5回「遺産承継業務」

【「遺産承継業務」って何?】

今回は、いわゆる「遺産承継業務」についてお話ししようと思います。

「遺産承継業務」とは、平成14年の司法書士法改正によって伴い新設された司法書士法施行規則第31条によって定められた司法書士の業務の一つです。

もっとも、それ以前においても、司法書士の本来的業務である相続登記等に付帯する業務として、必要に応じて行われてきた経緯はありますが、上記改正によって、その旨が明文化され、明確となったものです。

そして、その具体的内容としては、被相続人の資産の名義変更や払戻手続、あるいは資産の売却などの処分行為を指します。

 

 

 

【司法書士が行う遺産承継業務~遺産分割協議に基づく遺産の分配】

共同相続人間で、被相続人の遺産(不動産・預貯金・有価証券等)について、どのように分配するのか話し合いはできたけれども、その先どのような手続を経れば良いのかよくわからないとか、手続のために金融機関等に赴く時間・余裕がないということは良く見受けられます。

このような場合は、共同相続人「全員」から司法書士が当該業務を受任し、①戸籍等の収集、②遺産分割協議書の作成、③協議書に基づく相続登記、④協議書に基づく預貯金の払戻手続その他の遺産承継業務を司法書士が共同相続人全員の代理人として処理します。

これにより、各共同相続人の負担が著しく軽くなります。

具体的には、まず、共同相続人全員と受任契約を行い(受任契約書の作成)、共同相続人全員から遺産承継業務に関する委任状(実印を押印し、印鑑証明書を添付)を集めます。

次に、必要に応じ、相続人や遺産の調査を行った後、共同相続人全員の合意内容を記載した遺産分割協議書を作成(共同相続人全員が実印を押印し、印鑑証明書を添付)します。

そして、最終的に、司法書士が協議書の内容に従い、上記③、④その他具体的な遺産承継業務を行います。

 

【司法書士が行う遺産承継業務の限界~弁護士法第72条との関係等】

もっとも、このような処理ができるのは、共同相続人全員の間で、遺産分割に関する合意が成立している場合のみであり、仮に、相続人間の対立が一部でも発生してしまったような場合は、司法書士は、後述する弁護士法第72条との関係で、業務を行うことができず、辞任せざるを得ないことになります。

このように、紛争性が生じた場合は、「一般の法律事件」となり、それを委任を受けて扱うことができるのは、弁護士のみです(弁護士法第72条)。

また、行政書士の独占業務である自動車の名義書換えや、社会保険労務士の独占業務である遺族年金・未支給年金の請求等を司法書士が行うことはできません。

とはいえ、遺産承継業務の中に上記各事務が含まれているような場合は、行政書士や社会保険労務士をご紹介します。

また、皆様の中には、相続税の申告についてご心配や不安を感じている方もいらっしゃると思いますが、当然そのような場合は、税理士をご紹介します。

 

このように、我々司法書士は、最終的には他士業とのネットワークを利用して、適切な遺産承継業務を行っています。特に、「相続人間で協議はできているけれど、遺産が多岐にわたっていて、それぞれの手続が煩雑である」ような場合は、是非、我々司法書士へご相談頂きますよう、ご検討いただければ幸いです。

 

(著者:司法書士 大谷)

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