評価方法見直しの議論もありますが・・・
記憶に新しいところですが、昨年、1棟収益マンションの相続税評価をめぐる最高裁判決がありました。
要するに実際の時価と相続税評価額との乖離が大きすぎ、他の納税者との公平性に欠けるので、不動産鑑定による時価で評価しなさいということでした。
これは国が決めた財産評価のルールを国みずからが否定したという何とも不可思議な判決です。
この判決を受けて何かと問題とされてきた、いわゆるタワーマンションを利用した節税も見直しが入るのでは、と何年も前からいわれておりますが未だ具体的な見直しはされておりません。
要するにタワーマンションは時価と相続税評価額の乖離が大きすぎて節税効果が非常に高く、不公平だ、けしからん。という事です。
不動産の相続税評価上、土地は路線価、建物は固定資産税評価額をもとに計算しますが、マンションは土地の持ち分が少ないため、必然的に相続税評価額は低くなります。
特にタワーマンションは、中低層マンションと同じ敷地面積でも建物が高く積まれ戸数も増える分、土地の持ち分は更に少なくなるため相続税評価額は必然的に低くなります。この評価ルールに加え、タワーマンションが高値で取引されている昨今では時価と相続税評価額の乖離は非常に大きくなっており、その分相続税の節税効果が際立っているのが問題とのことです。
不動産の相続税評価方法がどのような方向で見直しされるのかはわかりませんが、不動産の相続税評価額と時価との乖離がこの問題の本質ですので、その差を極力小さくし、時価に近づけたいというのが見直しの方向性だと思います。
しかしながら不動産は個別性が強く、流動性も低いため、時価の算定は非常に難しいのが現実です。そもそも不動産は時価の算定が難しいため、相続税を評価する上で、路線価(建物は固定資産税評価額)という一定の物差しをつくっています。しかも相続税評価額が時価を上回ってしまうと、実際の財産価値に対して多くの税金を支払うという著しい不利益を与えてしまうため、そのような不利益を与えないよう路線価は時価の8割を目安としています。(時価の目安である公示価格の8割水準)大なり小なり路線価と時価の違いはあるにせよ、時価の目安である公示価格の8割程度にしておけば相続税評価が時価を上回ることがないだろうという一定の配慮、割り切りがあったのかもしれません。
この考え方が基本にあるとすれば今後、不動産評価の見直しがなされたとしても時価を上回らない程度のルールに変わりないと思います。
したがいまして今後、不動産の相続税評価の見直しが行われたとしても時価を上回る評価方法にはなりえないと考えられるため、効果が少なくなる可能性があるにせよ、相続税対策の要は不動産であることに今後も変わりないでしょう。。
不動産を多く所有する方は、定期的に時価と相続税評価額を見直すことにより、時価との乖離が大きいのか小さいのか、場合によっては逆転しているのかを把握することが、不動産を活用した相続対策を検討する上で重要なポイントです。
(著者:不動産コンサルタント 伊藤)