相続土地国庫帰属制度だけじゃない! 〜その他の相続関連法制解説(相続登記義務化・土地利用に関する民法改正)〜
◎所有者不明土地を発生させないことが狙い
先月取り上げた「相続土地国庫帰属制度」。「物納」との対比でコメントしましたが、本来は、地方を中心に土地活用の需要が減少し、放置される土地が増えるのを防ぐ目的で設けられた制度です。土地の放置を食い止めるためには「そもそも不動産の管理責任者は誰なのか?」というところを明確にする必要があります。
中でも意図せず不動産所有者が決まってしまう相続においては責任者の確定が急務となってきます。そこでこのたび、相続登記が義務化されたのです。所有者不明土地の発生を予防できるだけでなく、所有者不明土地であっても裁判所関与のもと、土地の管理を合理化・効率化、あるいは共有地・隣地の活用を円滑化する民法の改正も施行されています。以下、一つずつ見ていきます。
◎まずは令和6年4月施行「相続登記の義務」から
これは様々な媒体で司法書士の先生がコメントされているため、簡単に概略のみまとめます。
①不動産の相続を知った日から3年以内に相続登記を行うことが義務となる
②施行日は令和6年4月1日。ただし施行日以前に発生した相続にも遡及適用あり
③正当な理由なく登記を怠ると10万円以下の過料が科される可能性あり
④遺産分割協議が整わない場合などで3年以内の相続登記を行えない場合は「相続人申告登記(仮称)」を行う必要がある
⑤令和8年4月以降は2年以内の住所・氏名の変更も登記義務化
◎前項④「相続人申告登記(仮称)」とは?
3年以内に相続登記が行えない事情を考慮し設けられた暫定的な登記です。次の二点を相続登記義務の期間内に申請すれば過料を科されることが無くなります。
①相続が開始したこと
②自分がその相続人であること
◎2023年4月施行、土地利用に関する民法改正
所有者不明土地の問題解決を目的に、大きく3つの項目に見直しが入りました。特にこの民法改正については、相続土地国庫帰属法や相続登記義務化に比べて取り上げている媒体も多くありません。ただちに困る話ではないと思いますが、知っていると小回りの効きそうな規定も組み込まれています。紙面の都合上、詳細までは取り上げませんが、ぜひ一度、法務省のホームページなどで全容をご覧になってみてください。
(著者:税理士 高原)