『成年年齢変更!相続に与える影響は?』
明治時代から約140年間、日本での成年年齢は20歳と民法で定められていました。
この民法が改正され、2022年4月1日から成年となる年齢が18歳に引き下げられました。
今回の税金コーナーでは、成年年齢の引き下げが相続に与える影響について取り上げます。
◎年齢に関連して頻出する質問事項
特に資産管理会社などのプライベートカンパニーを所有されている方からいただくご質問です。
「子供(孫)を役員にしたいのだけれど、役員に年齢制限はありますか?」。結論は、役員に年齢制限はなく、未成年者でも役員に就任することが可能です。ただしハードルはもちろんあります。
株式会社の取締役を例にあげると、
イ)未成年であっても意思能力を有する年齢になっていること
ロ)就任に際して法定代理人の許可を受けること
ハ)就任に際して印鑑証明書の提出が求められる組織形態を採用している会社の場合には本人の印鑑証明書が必要であること
という条件があります。給与等の問題もあり、一般的には推奨できる話にはほとんどなりません。
◎未成年の法律行為に関わる影響
未成年者の法律行為については民法第5条1項に規定され、一定の制限があります。
相続に関連して影響の大きなものでは、成年年齢の引き下げにより18歳・19歳の人が遺産分割協議への参加資格を有することになりました。
現在遺産分割協議中であるという方は従来と比べて手続きをショートカットすることができます。その他の相続関係事項に、イ)単独で相続放棄が可能 ロ)遺言執行者への就任が可能 ハ)公正証書遺言の証人への就任が可能 ニ)普通養子縁組の縁組可能年齢引き下げ(養子となる場合) などがあります。養親となる養子縁組は、引き続き養親が20歳以上でないと行えません。
◎税金控除や特例に関する影響
成年年齢の引き下げは、相続税・贈与税の面においても大きく関わってきます。
具体的には、イ)未成年者控除 ロ)暦年贈与の特例税率 ハ)相続時精算課税 ニ)住宅取得等資金贈与 ホ)結婚・子育て資金贈与 へ)非上場株式の贈与税の納税猶予 などがありますが、それぞれ下記のような影響を受けることになります。
「未成年者控除」は成年に達するまでの年数×10万円が相続税の税額控除になるものですが、これが縮小となります。
「暦年贈与の特例税率」は20歳以上の人が直系尊属から財産の贈与を受けた場合に低い税率で贈与税が計算できるという特例ですが、これは18歳以上に対象者が増えます。
「相続時精算課税」「住宅取得等資金贈与」「結婚・子育て資金贈与」「非上場株式の贈与税の納税猶予」はそれぞれ受贈者側の年齢条件が20歳以上から18歳以上に引き下げられ、対象者が増えることになります。
◎まとめ
2022年4月1日に18歳・19歳の人は新成人となり、「一人前の大人」として扱われることになります。
今回の改正に伴う変化はさまざまですが、特に、親の同意なく一人暮らしの部屋を借りる・携帯電話を契約する・クレジットカードをつくるなどのお金に関わる「各種契約」の部分は、何かあると大きな痛手になることも考えられます。
これから成人になる若者自身はもちろん、「大人」の先輩である私たちが、率先してお金の教育に力を入れるべきでしょう。また成年年齢の変更により、公認会計士や司法書士、行政書士などの国家資格にチャレンジできる年齢も引き下げられました。
若く優秀な人材が活躍する社会となり、ともに仕事できる日が楽しみでもあります。
(著者:税理士 高原)