おひとりさま相続・おふたりさま相続①(実態編)
◎「おひとりさま」は増加傾向
50歳時点で一度も結婚経験がない人の割合を示した「生涯未婚率」は年々上昇しており、2030年には男性の3割、女性の2割が生涯未婚になるともいわれています。
ここでは定義として「身寄りがなく相続人がまったくいない人」に発生する相続を「おひとりさま相続」、「どちらか亡くなればおひとりさまになる夫婦」に発生する相続を「おふたりさま相続」とします。また、それに限らず、「子どもはいないけれどきょうだいはいる」などという方も、核家族化の影響によっておひとりさまとほぼ同じ境遇になることが想定されますので、決して対岸の火事ではありません。今月からは、そんなおひとりさま・おふたりさま相続に備えるためのポイントを全2回に分けてお話しします。
◎残念ながら人間は一人で亡くなることはできないのです
まずはおひとりさま相続において考えるべきことを時系列で並べてみます。
【老後期】
・自力で外出できなくなった場合、誰が財産を管理してくれるの?
・入院準備は誰か手伝ってくれるの?
・入院時の身元保証人は誰がなってくれるの?
【終末期】
・認知症や要介護になった時はどうなるの?
・体調急変時は誰に助けを求めればいいの?
・孤独死の場合は誰が発見してくれるの?
【死後】
・遺体引き取り・葬儀・埋葬・遺品処理は?
・先祖代々のお墓はどうなるの?
・預貯金や不動産などの財産はどうなるの?
中でも、死亡時のことを取り上げてみます。近親者が遺体の引き取りを拒否した場合(遺体の引き取りは義務ではないので拒否しても罰則は受けません)、市区町村が火葬・埋葬を行いますが、その場合には当然先祖代々の墓に埋葬されず、一定期間の保管後、市区町村が管理する共同墓地に埋葬されることになります。また、相続人のいない遺産は原則、然るべき手続きを踏んだのち、国庫に「納入」されます。死亡と同時に「相続財産法人」という法律上の人格が与えられ、家庭裁判所が選任する「相続財産管理人」(多くは弁護士)の下で処分されることになります。
◎おひとりさまは早めの備えが肝心
前述の通り、おひとりさまは近く老後のことから死後に生じる死亡直後の処理・遺産処理まで、数多くの問題への備えが必要となります。
私どもの事務所に相談に来られるお客様も、半分近くがおひとりさま相続やその予備軍となる方、またその親御さんであると言っても過言ではありません。親御さんの立場からは危惧している様子も多々伺えるのですが、「おひとりさま」という環境にある方ご自身は、頭では備えの必要性を認識されていても、「具体的に何をすべきかわからない」「誰に何を頼むのか決められない」などの理由から、行動を起こしていない方が多くいらっしゃいます。
長年こつこつ形成した資産が国庫に帰属するのは避けたい、遺骨はこのような方法で埋葬してほしい、などと願うのであれば、今のうちに考え、対策を講じておく必要があると思います。次回は「対策編」と題して、おひとりさま相続への備えの第一歩となる具体策をお伝えしたいと思います。
(著者:税理士 高原)