あらためて整理する相続対策のキホンのキ
不動産を活用した相続対策、不動産の購入やアパート建築、借入金の活用など、昔から何度も繰り返し耳にしている言葉、手法です。
相続対策の方法と、その効果は異なりますが、まだまだ相続対策を一緒くたにとらえている人が多いようです。
また、昨今では、何かにつけ「相続対策になりますよ」と不動産や金融商品を紹介してくる会社も多く見受けられます。決して嘘ではないと思いますが、相続対策の一面、一つの効果のみに着目し、他の影響を考慮していない、説明していないということもままあるようです。
「相続対策」はすでに使い古された営業トークですが、おそらく相続対策と称する商品を紹介した当の本人も、相続対策の枠組み、方法と効果を体系的に理解していないと思われます。
相続対策は大きく分けて、税金の対策と遺産を分ける対策の2つに分けられます。
更に、税金の対策は、「評価の引き下げ対策」「財産の移転対策」「納税財源の確保対策」の3つに分けられます。この3つの対策は、それぞれ効果が異なり、その人の財産構成や家族構成によって優先順位を考え、バランスよく組み合わせなければ上手な相続税対策はできません。
不動産を活用した「評価の引き下げ対策」とは相続税の計算をする際の評価方法の違いを活用した方法です。
相続税の評価上、土地は路線価評価(または倍率評価)、建物は固定資産税評価額となっております。したがって土地の場合、土地の時価と相続税評価額を比較して相続税評価額の方が低い場合は、現金で持っているより土地を購入したほうが相続税の評価が引き下げられる事となり、結果的に相続税が減少する事となります。
そもそも土地の相続税評価の基礎となる路線価は、「時価より少し安くしてあげよう」という国の親心から、時価の2割引という設定にしています。
国の言うところの時価というのは公示価格と呼ばれるもので、毎年1月1日時点における国の定めた地点の価格です。したがいまして国の言うところの時価である公示価格を100とすると相続税路線価は80、相続税路線価を100とすると公示価格は125という相関関係になります。
この理屈でいきますと、現金で時価1億円の土地を買った場合、その土地の相続税評価額は概ね8000万円となり、現金で持っている場合に比べ、相続税評価額が2000万円減少した分だけ、かかる相続税が減少することになります。もちろん全ての土地がこのように綺麗な相関関係になっておりませんので場所によって当然効果は変わります。例えば時価1億円の土地が路線価で計算すると5000万円という場所もあります。この場合、相続税を減少させる効果は更に高くなります。
建物も考え方は同じです。現金から建物に代わることによって、相続税評価額は固定資産税評価額となります。固定資産税評価額は、建物の建築価格(時価)より大幅に低くなっていますので、結果的にその分、相続税は減少することになります。
また、土地の上にアパートなどの賃貸用建物を建築する事により、土地、建物ともに更に相続税評価額が引き下げられる事となりますが、前述したように、アパートを建てなくとも、土地は時価と路線価、建物は時価と固定資産税評価額という相続税の評価方法の違いを利用することによって相続税を減少させる効果があるということを理解する必要があります。
これが不動産を活用した評価の引き下げ対策のキホンのキです。
(著者:不動産コンサルタント 伊藤)