コロナ禍で考える賢い不動産・相続対策
新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、地価の下落圧力が高まっている中、地主さん、不動産オーナーが今やるべき不動産・相続対策について考えてみます。
(1)コロナ禍の地価動向について
令和2年度1月度の路線価では、地価の全国平均は前年比1.6%の上昇で5年連続のプラスを記録しました。
主都市では上昇幅を拡大し、21都道府県で上昇する中で、19県はマイナスであったものの、下落幅は縮小と地価の上昇基調は継続していくかに予測されていました。
しかし、令和2年の春先にコロナ禍が本格化し、地価は下落基調に変化していくことになります。
国土交通省が令和2年9月に発表した基準地価によれば、全国の地価平均は▲0.6%のマイナスへと転じました。特に商業地では、前年+1.7%から▲0.3%と▲2%も落ち込みました。
そのような地価動向の中、令和3年1月26日に国税庁は、大阪市の一部エリアについて、相続税路線価を4%減額補正することを発表しました。足元をみても2度目の緊急事態宣言が発令され、日本経済の先行き不透明感も増す中で、地価がこの先どれだけ下落するかは見通せない状況にあります。
(2)コロナ禍における賢い不動産・相続対策とは
コロナ禍の賢い不動産・相続対策において、先ず、実施すべきことは、所有不動産の
①収益性を把握すること、
②相続が発生した場合の相続税額を把握すること
です。
①収益性を把握するには
・アパート、土地等の賃貸における賃料収入、更新料の収入項目
・管理費、固定資産税などの支出項目
・建物等の減価償却費
・借入金返済額と支払利息
・賃貸借契約書の内容(普通借家、定期借家等)
コロナ禍における地価が下落し、経済の見通しに不安要素がある場合には、上記項目を分析して、不動産から得られる「キャッシュフロー(収益性)」を検証することが重要です。
不動産の価値を判定する収益還元法を適用し、当該不動産の経済価値を把握するとともに、収益を生んでいない資産を処分して、資産価値の高い不動産へ組み替えていく等の方針決定にも必要になる分析です。収益性不動産オーナーや地主さんの中には、賃料をもらい、税金や借入金を払って手元にいくばくか残るので、賃料・地代の適正さ、投資利回り等を検証していないという方も多いかと思います。それでは、次世代へ優良な資産を引き継ぐことができませんので、この機会に是非、検証してみてください。
②相続税額を把握するには
・不動産の所在、用途地域
・土地面積、間口・奥行の長さ、形状など
・容積率、建蔽率
・相続税の評価減
相続対策は、遺産分割対策、納税資金対策、節税対策が柱になります。
相続の対象となる不動産の相続税額を分析することで、上記三つの対策をどのように講じればよいのか検証できるのです。
(3)最後に
コロナ禍により、不動産の価値が下落する局面では、これまで計画していた相続対策も見直しが必要になってきます。
例えば、地価上昇を前提に相続財産として価値を想定して、遺産分割を考えていた場合、地価の下落を踏まえた再計算が必要となる場合もあります。
コロナ禍で社会情勢も激変する中、賢く不動産・相続対策を講じ、財産を守っていく必要がありますので、ご不明点等あれば、お気軽に当協会までご相談ください。
(著者:手塚)