相続の税理士選びチェックリスト②
◎前回に続きまして
前回に引き続き税理士選びチェックリストの解説です。
日本の相続において不動産は財産内訳の多くを占め、この評価いかんにより相続は大きな影響を受けます。
相続の得意な税理士とは不動産評価の得意な税理士に他なりません。
そして、すべての税理士が不動産評価に精通しているわけではないからこそ、税理士選びが重要となります。
◎相続に詳しい税理士は意外と少ない
日本の相続税の申告件数は約14.9万件。税理士の登録者数は約7.9万人。
単純に平均すると税理士1人が年間に携わる相続税申告案件はわずか1、2件ということになります。もっとも実際は、専門特化が進んだ結果、年間に数百~数千件の相続税申告を取り扱う大手専門事務所もあれば、別に専門分野を持ち相続税はほとんど取り扱わないという事務所もあります。例えば所得税や法人税の繁忙期に相続税の相談をして、出てくる報告書が簡易なものであれば、その事務所の本領は相続税ではない可能性があります。
笑い話として読んでいただければと思いますが、私どもの事務所に相続税の試算をご依頼くださった方がいました。
その方は顧問税理士もいるそうで、なぜそちらに依頼しなかったのか尋ねてみると、一度は頼んだそうです。が、初回の面談時、その税理士は固定資産税課税明細書を見ながら「ところで〇〇さん。お持ちの土地の中でいちばん広い土地はどれですか?」と尋ねてきたとのこと。課税明細書の見方がわからなかったわけですね。そんな様子を見て不安になり、別の事務所に相談しようと思ったそうです。
揶揄しているわけではなく、税理士業界の一端を見せているエピソードだと思います。
相続の得意な事務所を見分けるには、やはり年間の相続税申告件数を尋ねてみるのがいちばんでしょう。
ただ、実際に目の前に座るのが所長とは限らない(むしろ違う可能性が高い)ですから、大手事務所なら安心、とは言い切れません。
大事なのは実務の担当者の経験値。それに加えて①腹を割って話せる担当者か、②上司(所長)のサポートは万全か、だと思います(特に①は盲点です)。
◎報酬は安ければいいとは限らない
税理士への報酬が安い方が依頼する側としては助かります。
しかし、税務署を納得させる申告書を作るためには税理士側もそれなりに作業時間を要しますし、過去に得た教訓なども取り込んでいきます。そうなると、ある程度はその作業量と経験値に見合った報酬額となるはずです。税理士報酬が安くて相続税額が高いのでは意味がありませんから、あまり安値で請け負っている場合も注意が必要です。
◎土地評価こそ相続専門税理士の本領発揮
先にも書いた通り、相続の得意な税理士は不動産評価が得意です。
評価方法や現地調査、役所調査の説明は自分の強みをアピールする最大のチャンス。にも関わらず評価内容の説明が乏しいということであれば、その専門性には疑問符が付くかもしれません。図面などの附属書類も、(多いほど素晴らしいというものでもありませんが)税務署を説得するにはそれなりの厚みになります。試算の段階でも説明資料としてある程度はほしいもの。こういった点も、相続に強い税理士を見極めるポイントになります。
顧問税理士のいる方は、相続だけ別の税理士に相談するのは気後れするかもしれません。
しかし、最近は税理士の間でも専門の違いという認識が浸透しています。セカンドオピニオンとして、気軽に訪れてみてください。
(著者:税理士 高原)