遺言書の作成『いざという時の為に』
今後、世の中がどうなっていくのか、不確実性が多く、大変不安に思われている方も多いと推察します。
今回は遺言書についてご説明します。
1・遺言書の効力
法定相続分は法律で決められています。
これは配偶者と血族相続人の組み合わせによって決まります。しかし、絶対的な拘束力はなく、遺言で相続分の指定があれば、これが優先されます。遺産分割協議によっても相続分を決めることもできますが、遺言者の意思を反映させたいのであれば遺言書の作成が必要です。
2・遺言書作成のポイント
遺言書は、指定相続分として、遺産の相続割合を自由にきめることができますが、争いを起こさない円満な相続を実現するには、遺留分(相続人に認められた最低減の権利)に配慮すべきです。また、表現があいまいで様々な解釈ができてしまう遺言書も争いの元になりますので注意が必要です。
3・遺言書を残したほうが良い場合
①子がいない夫婦
相続人は配偶者と亡くなった人の親、兄弟です。配偶者へ全財産を相続させたい場合は遺言書が必要です。
②前妻との子がいる場合、認知した子がいる場合
後妻の子とのトラブルを避けるため、遺言書を作成しておいたほうが良いです。
③内縁の妻に財産を残したい場合
内縁関係には遺産相続の権利はないので遺言書の作成は必要です。
④財産を与えたくない相続人がいる、相続人以外に遺産を渡したい場合
遺留分を考慮したうえで、指定相続分を残します。また、団体等に寄贈したい場合は、事前に寄付先への確認が必要となります。
4・遺言書の種類
遺言書には、遺言者が手書きで作成する自筆証書遺言と、公証人役場で公証人に作成してもらう公正証書遺言、遺言者が作成した遺言書を、公証役場の公証人の面前で封書して作成する秘密証書遺言があります。
自筆証書遺言書については、従来すべて手書きとされていましたが、民法改正で財産目録はパソコン作成が可能となり、法務局での保管制度も創設され、この場合、裁判所の検認の必要がありません。(2020年7月10日より施行)。
一方、公正証書遺言は、遺言内容を公証人に伝え、公証人が遺言書の書面を作成します。証人(未成年者、推定相続人及びその配偶者、直系血族を除く)2人が必要ですが紛失の恐れもなく、裁判所の検認も不要です。
5・遺言書の記載事項
法定記載事項(法的に効力のある遺言の内容)
①相続分の指定又は指定の委託
②遺産分割方法の指定又は指定の委託
③遺産分割の禁止
④財産の処分(遺贈、寄付行為、信託の設定)
⑤相続人の相互の担保責任の指定
⑥相続人の廃除とその取り消し
⑦子の認知
⑧未成年後見人、未成年後見監督人の指定
⑨遺言執行者の指定又は指定の委託
⑩生前贈与又は遺贈に対する持戻しを免除する旨の意思表示
任意記載事項
遺言書に記載しても、何ら法律上の効果は生じないが、相手方に対して道徳的な規範になると期待されるものを遺言する。(子供達は仲良く暮らし、お母さんの面倒をみてください。等)
6・遺留分
遺言書で指定相続分を自由に決めることができますが、相続人の遺留分に配慮しないと、後々争いの元になります。
遺留分とは、配偶者、子、父母などに最低限保証されている取り分です。
遺留分を侵害された相続人は侵害分を請求できます。(民法改正で、相続財産ではなく金銭による取り戻しとされた)
7・遺族が困らない為に
相続が発生したが、すべて被相続人が行っていたので、どこに何があるやらわからないというご相談がよくあります。
いざという時のためにも、ご自分の財産目録を作成しておくことは重要です。
遺言書の作成を検討される場合、改めて、ご自分の財産の棚卸が必要で、その中で、ご自身の生存中に処分するもの、残すものの棲み分けをしてください。財産目録&遺言書があれば、ご遺族も安心です。是非、作成されることをお薦めします。
ご不明な点は、日本地主家主協会へお問合せください。
(著者:得村)