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相続

昨今の相続ビジネスについて

近年の相続税増税にともなう相続税の大衆化の流れは皆さんご承知のところだと思います。

銀行、保険などの金融機関、税理士、弁護士、司法書士などの士業、不動産会社やハウスメーカーなど、様々な業界で「相続対策」と銘打って、土地資産家に対して猛烈なアプローチをかけております。

このような状況にともない、近年は、にわか仕立ての相続コンサルタントが増加しているように感じます。そう、彼らにとっては相続マーケットに狙いを定めた「相続ビジネス」なのです。

ビジネスですので商品を売って、また、役務を提供して報酬をいただきます。もちろんこれはこれで悪いことではありません。しかし、その役務提供の内容によっては、ややもすると業者やコンサルタントの自己満足となってしまい、お客様にとって本当に必要な商品、役務の提供なのか、と疑問を感じる提案を見受けることもあります。

 

典型的な相談例として、

「ハウスメーカーから、『空いている土地にアパートを建築しませんか、相続対策になりますよ』と勧められているけど、はたしてどうしていいものか」というのがあります。

確かにアパートを建築すると、土地や建物の相続税評価額が引き下げられ、結果、想定される相続税も減少するという効果がありますが、一方で、更地の状態より売却しづらくなる、また、子供たちが相続した時に分けづらくなるなどの面もあります。将来の相続税の納税財源が乏しい場合や、子供たちが分けやすいよう、アパートを建築しないで、いつでも売却できる状態に維持しておくという考えも必要です。その土地でアパート経営が成り立つか、という視点だけではなく、建築することによって財産全体にどのような影響を及ぼすか、という点が見えてこないと多くの人は判断できないのが現状です。

 

 

全体像を把握したうえで、具体的に建築を検討する場合には、綿密な計画が重要なのはいうまでもありません。賃貸経営は、一つの投資事業、経営ですので長期にわたって経営が成り立つかという視点が第一です。相続税の節税は、賃貸事業が成り立った上での効果ですので、くれぐれも順番を誤ってはいけません。また、せっかく建築したとしても、空室や賃料の下落、借入金の返済など、賃貸経営に不安がつきまとうようであれば、相続対策どころか何もしないほうが精神衛生上良いともいえます。

 

このような相談をされるお客様の性格や場所によっては、全体像を整理したうえで「賃貸事業の先行きも不透明ですし、将来の相続税の納税財源として売却しやすいよう、また、子供たちも分けやすいように、何も建築しなくて良いのではないでしょうか。ただし、固定資産税の負担がありますので、当面は時間貸し駐車場あたりが適当だと思います」という回答を差し上げることもあります。

これを聞いて、「何か対策をしなければならないと思っていましたが、今の状態で良いという判断ができました」と安心されるお客様も少なからずいらっしゃいます。

このような相談をされるお客様は、「何を建てるか」ではなく、「建てるか建てないか」というアドバイスを望んでいるのです。

 

相続対策の多くは資産を動かす事であり、非常にエネルギーのいることです。積極的な対策を望む方がいる一方で、本音では現状を変えたくない人も多くいらっしゃいます。相続対策は、やらなければならないものではありません。何もしなくても、また、何もしない方がいい場合もあります。何がお客様の安心、安全に繋がるのか、じっくり目を瞑って、あらゆる方向から検討する。それが我々コンサルタントの価値であり、そして、お客様に期待されているところではないかと、日々悩みながら仕事をしております。

 

(著者:不動産コンサルタント 伊藤)

 

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