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相続

遺産分割と不動産調査の重要性

相続の対象となる被相続人名義の不動産が複数存在し、且つ相続人が複数存在する場合は、遺産分割の際に、その不動産の価値、いわゆる換金価値が重要な要素を占めることとなります。

 

相続税を計算する際、相続財産の評価は、時価が原則ですが、不動産の場合はその時価を客観的に示すことが難しいため、路線価などの一定のルールに従って評価します。しかしこれはあくまで土地の形や利用方法などによる机上の計算に基づき相続税を計算するための簡便的な評価方法であり、実際の時価とは性格が異なります。(ただし路線価評価も一定の目安になることは事実です)

このような事から、遺産分割の際に相続税評価額(路線価評価)をもとに相続人それぞれが不動産を取得したとしても、その後、売却した際に相続税評価と大きな乖離が発生した場合は、そもそもの遺産分割をめぐってトラブルになりかねません。例えば長男と次男がそれぞれ相続税評価額を基準に1億円の不動産を相続し、その後、同時期に、それぞれが相続取得した不動産を売却した場合において、一方が1億円、もう一方は7000万円ということが実際に生じる場合があります。残念ながら平等に分けたつもりが、実は平等ではなかったということになります。(売り急ぎ等の事情は考慮しないこととします)

 

これは先にも述べましたが、相続税評価額は相続税の評価をするための机上のルールであり、実際の不動産時価に影響を与える要素を細かく盛り込んでいないというのが一番の原因です。なお、本稿では不動産鑑定評価ではなく、あくまで不動産実務家という視点で述べさせていただきます。
実務家から見た不動産価格に影響を与える要素には以下のような点が挙げられます。

 

・登記簿の面積と実際の面積が異なる
・隣地との境界が明確でない
・隣接土地所有者と境界の確認がとれない、境界紛争中である

・隣地の越境物がある
・地下埋設物や土壌汚染が発見された、発見されるおそれがある
・前面が私道であり、私道所有者から掘削の承諾が得られない

・検査済証を取得していない建物、違法増改築をした建物とその敷地

 

上記の事実が発見された場合は瑕疵のある不動産、すなわち問題を解決するまで費用と時間がかかるリスクのある不動産として、実際の不動産マーケットでは通常の価格(瑕疵のない土地)の2割~3割、場合によってはそれ以上に価値が下がってしまいます。

 

したがいまして、不動産を遺産分割する際は相続税評価額ではなく実際の換金価値に着目して分ける事がトラブルを防ぐポイントです。

このようなことから最近は不動産鑑定士による「不動産鑑定評価」をもとに遺産分割をするケースも増えていますが、実際は上記のような細かいポイントまで加味していない簡便な評価も多いようです。より精度の高い評価、換金価値に近づけるためには財産評価を行う税理士はもちろん、不動産鑑定士や、不動産実務家を交えて協議し、それぞれの相続人に対して不動産固有の特性を説明することが、トラブルを未然に防ぐポイントです。

 

(著者:不動産コンサルタント 伊藤)

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