モノを大切にする心(リフォームの活用)
令和5年になりました。本年もよろしくお付き合いくださいませ。
さて、昨年あたりから目に見えて多くの食品、衣料品、工業製品など生活に必要な多くのものが値上げされました。
これは世界的な原材料高、原油などのエネルギー高や円安が主な原因とされております。
このように物の値段が上昇することをインフレーション、いわゆるインフレと呼びますが、物価とともに賃金なども上昇し、消費も上向いて経済全体が活性化すれば、適度なインフレは歓迎すべきですが、残念ながら今の状況は、物価は上がるものの、賃金は上がらず、消費も進まず生活は苦しくなる、という悪い経済循環に陥ってきているようです。
私たちが仕事でよく耳にするのは建築費の高騰です。
これは既に何年も前から言われてきたことで、東日本大震災や東京オリンピックによる建設需要による原料高、人件費の増加による建築費の上昇、その流れに今回の原料高、円安による建築費の上昇が加わりました。
一般財団法人建築物価調査会の資料によりますと2021年10月から2022年10月までの1年間では、建物構造によって若干の違いはあるものの建築価格は約10%上昇しています。
もう少し遡って10年前の2011年と比較すると約40%もの上昇です。要するに2011年に1億円で建築できていたものが今建築すると1億4000万円になるという計算です。
不動産経営という観点で考えますと、前述した物価も賃金も上昇する良いインフレのように、建築費とともに建物から得られる賃料も上昇すれば十分に建築費の上昇分を吸収できるのですが、残念ながら賃料は10年間ほぼ横ばいとなっています。
ということは要するに建物に対する収益率、投資利回りが少なくともこの10年低下し続けているということです。これまでの建築費と賃料の相関関係を見ますと、今年よりも去年、去年より一昨年に建築していれば、投資効率の高い賃貸経営ができていたと言えますし、今後同じような傾向が続くと予想すれば、来年より今年に建築したほうが少しでも高い収益性が得られるとも考えられますが果たしてどうでしょうか。
別の角度から需給という観点で建築費を考えますと、需要が減れば価格は抑えられるとも言えます。
原材料などにしても人件費にしても理論上は需要がなくなれば価格は落ち着くもしくは下落します。それを考えると、原材料需要、建築需要が旺盛なこの時期に建築するより、適切な修繕をしつつ大事に使って世の中の様子を見ながら建物を建築することも選択肢の一つといえます。
建築を先送りすることは短期的には経済活動にプラスの影響を与えないかもしれませんが、長期的な地球環境の事を考えるとこれからの大事な視点かもしれません。「モノを大切に」小さいころに教わったことですね。
新年早々ずいぶん大きな視点で偉そうな事を書いてしまいました。我が家の車も冷蔵庫も、もう少し大切に長く使おうかと改めて考えているところです。
皆さまにとって本年がより良い年でありますよう心よりお祈り申し上げます。
(著者:不動産コンサルタント 伊藤)