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底地・借地権

借りた土地を返したいのに返せない

先代、先々代が良かれと思って貸した土地が返ってこなくなった。

戦前、戦中の建物保護法の制定、正当事由によらなければ更新拒絶できなくなった借地法の改正などによって事実上、貸した土地は返ってこなくなりました。

返してもらうにしても、借地権を買い戻すというように多額の立退料を支払わなければなりません。しかも借地契約当初は土地が返ってこなくなるとは想定しておりませんから権利金など一時金の授受もありません。なんで貸した土地を返してもらうのに多額の金銭を払う必要があるのか、どうも納得がいかない。

借地人も知恵をつけて何かと権利主張をする。これが現在の借地問題の根っこにある部分です。時代の経過とともにこのような感情も薄れつつもあると思いますが、この理不尽な借地制度に対する地主の感情は財産とともに次世代へ脈々と継承されています。

 

 

 

そんな現在でも、地主にはお世話になったということで借りた土地を無償で返還したいという借地人も稀に存在します。

このような借地人の申し出に、地主も悪い気はするはずもなく「タダじゃ悪いから建物の解体費用程度はこっちで負担するよ」あるいは「解体費相当額で借地権を買い戻すから、そちらで解体して更地で返してよ」という回答になることは想像に難くありませんし、事実、そのような対応が多く見受けられます。

当事者間では非常に円満な解決方法ですが、実務では借地上の建物の規模や構造によって解体費用が大きく変動しますので注意が必要です。しかも昨今は人件費や廃材の処分費なども上昇し、解体費用もそれなりの金額になります。木造家屋ならまだしも、鉄骨や鉄筋コンクリート造の建物の場合は相当な解体費用になります。

 

このような場合は借地上の建物ごと無償で返還されても地主は相当な解体費用を負担しなければなりません。それどころか解体費相当額を借地人に支払うと言っても、借地権を買い戻す場合と同等かそれ以上の負担になる場合もあります。

借地人の立場にしても解体費の捻出が難しいので、地主に無償で引き取ってもらいたいというのも本音かもしれません。地主にしてみれば解体費の満額は出せないけど借地権の買戻し金額として解体費相当額の一部を支払い、借地人に解体してもらって更地にて返還してもらうことも考えられますが、借地人が費用を持ち出してまで建物を解体して地主に土地を返還というのも現実的には難しいでしょう。

 

相続によって借地権付き建物を取得したものの、利用する予定もないため地主に返還したい。しかし解体費用が高額のため、地主も引き取ってくれず、自身も費用捻出が難しいため空き家の状態で放置せざるを得なくなる。地代の支払いが滞って地主に借地契約を解除されても借地人にとって特に不利益はないが、土地が返ってきた地主も困ってしまう。今後も増えるであろう空き家問題の一類型です。

 

いずれも最後は地主が対処せざるを得ないケースが多いと思いますが、このような事も考えると借地権設定時の権利金や期間満了時の更新料などの一時金は非常に大事であり、意味がある金銭といえるでしょう。頑丈な建物は壊すのも大変。100年後が心配です。

 

(著者:不動産コンサルタント 伊藤)

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