賃料改定の基本ルール
1 はじめに
借地・借家契約の締結時に取り決めた賃料は、その後の事情によっては契約途中で改定することができます。
賃料改定の基本的なルールは借地借家法に定められていますが、今回はその概要を確認してみましょう。
2 賃料改定の要件・手続
(1)本紙1月号のおさらいになりますが、借地・借家の賃料は、現行賃料を定めた当時から大きく事情が変更し、現行賃料が不相当となった場合に改定を請求することができます。具体的には、
①土地・建物の租税(固定資産税・都市計画税)その他の負担の増減、
②土地・建物の価格の上昇・低下、
③その他の経済事情(物価、賃金等)の変動、
④近傍同種の土地・建物の賃料など
の事情が考慮されます。
現行賃料が不相当であれば、具体的に相当な金額を算定することになりますが、その算定方法は、(ⅰ)スライド法(経済変動の指数に合わせる)、(ⅱ)利回り法(物件価格に対する期待利回りをもとに算定する)、(ⅲ)差額配分法(契約の内容・経緯等を勘案して適正賃料と現行賃料との差額を双方に配分する)、(ⅳ)賃貸事例比較法(類似物件の賃貸事例と比較する)などがあります。借地の場合は、土地の固定資産税に一定の倍率を乗じる公租公課倍率法によって簡易に算定することもあります。
(2)賃料改定の通常の流れとしては、まず相手方に対して賃料改定を求める旨の通知を送付し、具体的な金額について協議を行います。合意に至らない場合は、裁判所に調停を申し立て、調停委員の仲介により協議を行いますが、それでも合意できない場合は、賃料改定を求めて訴訟を提起します。最初から訴訟を提起することはできず、まずは調停から始めなければなりません。
賃料改定の訴訟では、双方の主張・立証に基づいて裁判所が判断しますが、適正賃料の算定には専門的な知識を要するので、裁判所が選任した不動産鑑定士が算定し、これを参考として判決が出されています。ただ、訴訟の場合でも、裁判官が間に入って和解により解決するケースは多いと思われます。
3 係争中の賃料支払
(1)賃料増額の場合
賃貸人が賃料増額を求めて係争中の場合、裁判で確定するまでの間は、賃借人は自らが相当と考える額(現行賃料を含む)を支払えば足りることになっています。ただ、裁判で増額賃料が確定した場合、当初の増額請求時に遡って賃料が増額されるため、賃借人は増額請求以降に支払った賃料の不足分を支払う必要があり、さらに年10%の利息が付加されます。
(2)賃料減額の場合
賃借人が賃料減額を求めて係争中の場合、裁判で確定するまでの間は、賃貸人は自らが相当と考える額(現行賃料を含む)を請求できることになっています。係争中にもかかわらず、賃借人が一方的に減額した賃料を支払ってくることがありますが、その場合は賃料が一部未払であるため債務不履行の状態になります。もっとも、未払額が相当高額に上らない限り、賃料未払による契約解除をすることはできません。
また、裁判で減額賃料が確定した場合、当初の減額請求時に遡って賃料が減額されるため、賃貸人は減額請求以降に受け取った賃料の超過分を返還する必要があり、この場合も年10%の利息が付加されることになります。
4 まとめ
上記のルールにより賃料改定を求めることができますが、具体的な金額については、算定方法が一律でないこともあって争いになりやすいところです(なお、紛争防止のために賃料改定方法をあらかじめ特約で定めておくことは可能です。)。増額・減額のいずれにしても、まずは専門家にご相談頂き、適正賃料の目安や交渉方針等を確認して頂ければと思います。
以上
(著者:弁護士 戸門)