相続した借地を売却したい
「親から相続した実家を売却したいのですが、どれくらいで売れるのか査定してほしい。その実家は借地だが、この辺だと所有権の6割から7割で売れるらしいが。」
このような相談を受けることがあります。特に難しい相談ではなさそうですが、借地の実務に精通していれば、軽々に回答できない相談ということが言えます。
このような相談者には、査定以前に、まずは借地とはどのような権利なのかということを理解いただかなければいけません。このような相談にはまずは次のような回答が必要です。
「借地権付き建物を譲渡(売買)する場合、地主の承諾が必要となります。したがいまして地主が承諾してくれるか否か、承諾いただく場合の条件は何かを確認する必要があります。また、地主に借地権を買い取ってもらうという方法も考えられます。」
順番としては、借地権を地主が買い取ってくれるか、その次に借地権を売却する際に承諾してくれるか、その場合の条件(承諾料)はいくらか。という地主との交渉が必要になるでしょう。
また、建物が老朽化している場合は、新たな買主は建替えを前提に購入すると思われます。その際はやはり地主の承諾が必要となり、別途建替え承諾料が必要となります。なお、承諾には、地代の納入状況や、更新料などのトラブルがないかなど、これまでの地主との関係も少なからず判断に影響を与えます。
万一、地主が譲渡の承諾をしない場合は裁判所に申し出ることによって地主に代わる許可を受けることが可能です。ただし、このような手続きを経てまで購入したいという人はほとんどいません。(二束三文になってしまいます)
以上のように借地権の譲渡は非常にデリケートであり、地主とのボタンのかけ違いによって資産価値に大きな影響をあたえます。
机上で簡単に査定となかなかいきませんが、借地権単独での売却の場合で且つ、買主が建物を建て替えることを想定し、地主の承諾が得られるという前提ですと、路線価に面積と借地権割合を乗じた金額の〇〇割前後で売却できると御の字ではないかと思います。
いずれにしても先ずは地主に相談し、地主の考えを聞かなければ始まりませんので、ご本人から直接地主に挨拶を兼ねて、借地を相続した旨、売却を検討している旨を伝えたうえで、借地権の実務、交渉に長けた会社を間に入れて進めるのがよろしいかと思います。
これは実際の回答例ですが、地主の考えが分からない状況での価格査定は、絵に描いた餅に過ぎません。最低限、このような借地権の本質を理解、納得できない、借地権の割合に拘りすぎる借地人は売却を上手に進めることができないといっても過言ではありません。
(著者:不動産コンサルタント 伊藤)