新・借地借家を巡る諸問題④_被災借地借家法
1 はじめに
今回は、被災借地借家法を取り上げます。
同法の正式名称は「大規模な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法」で、文字通り大規模災害の発生した被災地における借地・借家関係に関する特別の措置を定める法律で、一般的に適用される借地借家法とは異なる規定がなされています。
被災借地借家法は、昭和21年制定の罹災都市借地借家臨時処理法(罹災都市法)を廃止して平成25年に新たなに制定された法律ですが、大規模な自然災害が頻発する昨今の情勢からすると、日本中どこにあっても大規模災害の被災地となる可能性がありますので、こうした特別措置法についても整理しておいていただければと思います。
2 被災借地借家法の適用場面
被災借地借家法は、大規模災害が発生した場合に自動的にまた広く一般的に適用される訳ではありません。
被災借地借家法が適用されるのは、「借地権者の保護その他の借地借家に関する配慮をすることが特に必要と認められる大規模な火災・震災・その他の災害」(特定大規模災害)が発生した場合であって、政令により、①当該災害を特定大規模災害とすること、②被災借地借家法の規定のうち当該災害に対し適用すべき規定の範囲、③当該規定を適用する地区の範囲が指定された場合に限定されます。
そのため、大規模災害で一定の被害を受けた地域であっても、政令による指定がない場合には、被災借地借家法は適用されませんので、その点は注意が必要です。
3 借地関係
⑴ 借地人の保護制度
大規模災害等により借地上の建物が滅失しても、借地権は直ちに消滅する訳ではありませんが、被災借地借家法では、借地人の保護を図るため、借地上の建物が滅失した場合に関していくつかの規定を定めています。
具体的には、
①借地人による借地契約の解約権(政令施行日から1年間限定で、3ヶ月の予告期間が必要)、
②掲示なき6ヶ月間の借地権の対抗力と掲示による3年間の借地権の対抗力、
③借地権の譲渡・転貸に対する裁判所の許可制度が規定され、元々借地人の保護に厚い借地借家法の一般的な規定よりも、更に借地人に有利な内容が定められています。
⑵ 被災地短期借地権
また、被災借地借家法では、被災地における暫定的な土地利用のニーズに応える目的から、存続期間が5年以下で契約更新のない借地権(被災地短期借地権)の設定が認められています。
ただし、被災地短期借地権の設定は、政令施行日から2年間に限定され、また、書面によることが必要とされていますので(公正証書によることは必須ではない)、この点は注意が必要です。
4 借家関係
大規模災害等により賃貸借の目的となっている建物が滅失した場合、借家契約は終了して借家権は消滅することになり、元の家主が建物を再築しても、元の借家人は再築建物について当然に借家権を取得することはできません。
この点、被災借地借家法では、元の家主が賃貸用建物を再築し賃貸の勧誘をする場合には、元の借家人に対してその旨を通知しなければならないとされ、元の借家人が再築建物に入居する機会が与えられることになっています。
ただし、当該通知が必要なのは、政令施行日から3年間とされています。
(著者:弁護士 濱田)