新・借地借家を巡る諸問題③_建物所有を目的としない土地賃貸借
1 はじめに
今回は、建物所有を目的としない土地賃貸借を取り上げます。同じ土地の賃貸借でも、建物所有を目的とするかしないかにより、その取扱いは大きく異なります。具体的には、駐車場や資材置き場用地の賃貸借等が該当しますが、今回はこうした建物所有を目的としない土地賃貸借について整理していただければと思います。
2 借地借家法の不適用
⑴ 原則
借地借家法は、「建物の所有を目的」とする土地賃貸借等に適用されるため、建物所有を目的としない土地賃貸借には適用されないのが原則です。
そのため、建物所有を目的としない土地賃貸借では、①契約期間を30年未満とすることが可能で、②契約期間の満了時の更新の有無を自由に定められ、③更新後の契約期間も自由に定められ、④中途解約の規定も自由に定められることになります。
⑵ 借地借家法の適用可能性
駐車場や資材置き場用地として土地を賃貸した場合でも、賃借人により立体駐車場や管理事務所等の工作物が建築されることはよくあることだと思います。
このように、賃借人が駐車場や資材置き場の付帯設備として工作物を建築する場合、当該工作物の構造や規模によっては、「建物」に該当しうる場合があり、当該賃貸借契約の「目的」の解釈によっては、建物所有目的が認定される可能性も生じます。
そのため、駐車場や資材置き場用地として土地を賃貸する場合でも、契約書を作成しておくことは当然のこととして、契約書上その契約目的を明確にするとともに、工作物の建築を許容する場合でもその許容する工作物の内容(構造や規模等)を明確にしておくことが望ましいといえます。
3 留意点
このように、建物所有を目的としない土地賃貸借では、賃借人の保護に厚い借地借家法の適用がないのが原則となり、賃貸人(地主)に有利な内容の合意をすることも可能となりますが、いくつか留意点を挙げておきます。
⑴ 契約期間
借地借家法の適用がない場合、契約期間の下限はありませんが、上限が20年(令和2年4月以降は50年)となります。
⑵ 更新
借地借家法の適用がない場合、契約期間の満了時の更新の有無は自由に決められますが、契約期間満了後も賃借人が当該土地の使用を継続し賃貸人(地主)が異議を述べない場合、当該賃貸借は法廷更新されます。
ただし、建物所有を目的としない土地賃貸借の法廷更新は、民法の規定に基づくものであるため、借地借家法が適用される場合とは異なり、法廷更新後の契約内容は、契約期間も含め従前と同じということになります。
⑶ 中途解約
賃貸借契約においては、契約期間の定めがある場合でも、中途解約の規定を設けることができますが、借地借家法の適用がない場合には、中途解約に「正当事由」が必要とされないため、賃貸人(地主)からの自由な解約が可能となります。
ただし、解約申入れをしてから契約終了までの期間について定めがない場合、土地賃貸借の場合は解約申入れから1年後に契約が終了することになり、契約終了までの期間が少々長くなります。この点、解約申入れから契約終了までの期間(予告期間)についても、特約により短縮することができますので、予告期間を短縮する特約を定めておくことも考えられます。
(著者:弁護士 濱田)