「第三者のためにする契約」_誰のための契約か?
「第三者のためにする契約」とは、不動産の売買契約形態の一つで通称「さんため」とも呼ばれています。
日本語の通常の解釈としては、「第三者の利益のために自己犠牲を払って契約をする」という崇高なイメージがありますが、実際の不動産取引ではどのような意味合いで用いられ、どのような場面で利用されるのでしょうか。

第三者のためにする契約とは、不動産転売事業者による売買手続きの手法で、AからBへの売買、BからCへの売買(転売)の流れのなかで、間に介在する転売事業者Bの登記手続きを省略することで、中間省略登記とも呼ばれます。
もちろん法律で認められた手続きであり脱法的な要素はありません。
登記手続き上、本来このような取引ではAからB、BからCへと実態に即した登記手続きがなされるのが望ましいのですが、登記にはそれなりの費用が発生することから、その転売事業者Bの取得経費の削減を主目的としてこのような手続きがとられることがあります。(転売事業者Bはあくまで第三者の為になした契約であって自身は取得していないという法解釈のようです)
取得経費が下がる分、売主や買主である第三者に、その浮いた経費分を間接的に還元できるという大義ですが、本音は、転売事業者である自社の利益を少しでも多く確保することです。
言葉は悪いですが、先に第三者である転売先を見つけたうえで、売主と限りなく安く交渉し、間に入って転売利益を得る。業界用語で、一瞬だけ取得するワンタッチ(実際はノータッチ)とも呼ばれます。
もちろん合法手続きですし、経済活動として転売は全く否定するものではありません、ただ、このような手続きを用いての転売は、一言でいうと「あまりきれいな取引ではない、胸を張れる取引ではない」というイメージでしょうか。
売主から見ても、買主であるはずの不動産事業者が、さらにその先の転売先名義で登記しますというのも、みすみす安く買いたたかれたようであまり気持ちの良いものでもありません。まさに「第三者のための契約」とはいいながら、第三者を利用して自分が多くの利益を得るという「自分のための契約」というのが実態です。
不動産登記は取引の原因や所有者などの当事者を記録した公の証明ですから、お客様の利益、取引の安全性、ひいては公共の利益という観点から、限りなく実態に即し、消費者に分かりやすく説明できるものが望ましいと言えます。特に魑魅魍魎が蠢く不動産業界だからこそ、特殊な説明が必要な取引は極力避けるのが本来あるべき方向ではないかと思います。転売利益が見込めるからこそ、登記費用など不動産取得に要する費用はお客様に安心していただくため、説明しやすくするための必要経費という考えもあります。
第三者のため契約について説明しましたが、多くの不動産事業者は転売目的であっても登記を省略せずに手続きをしているのが実態です。もちろん不動産取得に関する費用が軽減されればこのような説明の難しい手続きもなくなるのですが。
(著者:不動産コンサルタント 伊藤)