新型コロナと2020年地価公示・不動産の価格の決まり方
【新型コロナと2020年地価公示】
新型コロナウイルスの感染拡大の影響が、不動産業界にも波及しています。
具体的な影響としては、
①住宅設備の部品・機器の納入遅れ(新築、リフォームの竣工・引き渡し期日が遅れる)
②マンスリーマンション、民泊等の稼働率の悪化
③不動産土地売買のキャンセル
④建築請負契約の延期等
が出てきております。
そのような状況下、2020年公示地価が令和2年3月18日に国土交通省から、発表されております。
概況として、全国の住宅地における平均は+0.8%の上昇、商業地は+3.1%の上昇になっており、三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)の住宅地は+1.1%、商業地は+5.4%の上昇と報告されています。
公示地価の発表だけをみると、全体的に地価の上昇傾向とみられますが、それは表面的なことだけで、現実には、地方圏において、まだ地価下落傾向は続いていますし、地価上昇のエリアの中においても、最寄り駅からの距離等により、地価に差が出る、いわゆる「二極化」傾向も依然として強まっております。また、この地価公示価格は、令和2年度の1月1日時点の価格であることから、コロナウイルスによる影響は反映されておりませんので、今後の地価動向に留意する必要があります。
さて、公示地価を代表とする不動産価格は、そもそもどのように決まっていくのでしょうか?この問いに明確に答えられる方は少ないと思いますので、一緒に考えていきましょう。
【不動産の価格の決まり方?】
「不動産」の価格を考える上で、根本的な「物」の価格は、どのように決まっていくのか理解する必要があります。
「物」の価格は、価格の三面性により決定します。その三面性とは、①費用性、②市場性、③収益性となり、その説明は、以下の通りです。
費用性:その物を作るのにいくらかかったか。
市場性:その物がいくらで取引されているのか 収益性:その物からどの程度の利益があがるのか |
例えば、「車」を想像してみてください。その車を作るのにいくらコストがかかったか(費用性)、その車と同等の車両が他メーカーにおいて、いくらぐらいで販売・取引されているのか(市場性)、その車を売ることでいくらの収益があがるのか(収益性)、を分析して、車の販売価格が決まってくのです。
不動産も「物」の価格判定と同様に、費用性・市場性・収益性を分析・アプローチして、不動産の価格を求めています(価格の三面性に即した以下の手法を使用)。
費用性→原価法
市場性→取引事例比較法
収益性→収益還元法
原価法は、建物価格を求める際に主に使用します。その建物を現時点において同様の建物に建て替えた場合の価格を求め(再調達原価)、その価格から築年数に応じた建物の減価分を控除して、建物価格を求める手法になります。
取引事例比較法は、非常にわかりやすいと思います。対象不動産の周辺の実際の取引事例の価格を調査して、その取引事例と対象不動産の地域性、個別性を分析・比較して、補修正して、価格を求めていく手法になります。
収益還元法は、対象不動産を賃貸にした場合に得られる年間の収入からその収入を得るための運営経費(固定資産税、都市計画税、火災保険料、管理料等)を控除して、手元に残る純収益を還元利回りで割り、対象不動産の価格を求めていく手法になります。
地価公示地、路線価等は、その地域における標準的な画地(土地)が選定され、その画地に対して、2人の不動産鑑定士が取引事例比較法、収益還元法を駆使して、その2人の不動産鑑定士が、算出した不動産価格の平均値で公示地の価格等が決まっていくのです。
2人の不動産鑑定士が出す価格は、一致する場合もありますが、通常はやや差が出るのが一般的です。なぜなら、手法の適用に当たって、採用する取引事例や賃貸事例が違いますし、その資料の分析・判断の基準が鑑定士により、異なるからです。
以上のように、不動産価格(公示価格)がどのように決まっていくのか見てきました。
すでに、コロナショックが経済に深刻な影響を与えていることから、地価に及ぼす影響も大きいと推測され、「コロナ後」を見据えた土地対策、相続対策を考える又は練り直す必要があろうかと思います。
外出がままならない今だからこそ、ご所有の不動産について、一つの視点だけでなく、多面的な角度から検証してみてはいかがでしょうか。
(著者:手塚)