「借地借家法を考える」⑤地代等と建物賃料の増減額
1 はじめに
今回は、借地契約における地代等と建物賃貸借における賃料(借賃)の増減額について取り上げます。
通常の建物賃貸借契約の場合、契約期間が2~3年とされる場合が多く、契約期間途中で賃料の増減額が問題になることはそれ程多くないと思いますが、いわゆるサブリース契約の場合には契約期間も長くなり後述のとおり賃料の増減額には注意が必要となります。また、借地契約の場合は、契約期間が原則30年以上と長期に及ぶため、地代等の増減額が問題となる場合が、それなりに出てくると思います。
契約期間途中で地代等や建物賃料の増減額請求ができること自体は、ご存知の方が大半だと思いますが、実際にどのような手順・手続がとられることになるのか、また、サブリース契約における注意点について、この機会に整理していただければと思います。
2 増減額請求における手順・手続
⑴ 増減額の請求
借地借家法上、借地契約に定められた地代等や建物賃貸借契約における賃料が、租税等の増減や土地価格等の変動により不相当となった場合や、近隣の地代等や賃料の相場と比較して不相当となったような場合には、契約当事者は、将来に向かって地代等や建物賃料の増減を請求することが認められています。
ただし、一定期間地代等や建物賃料を増額しない旨の特約がある場合は、その間は増額の請求はできないものとされています。
⑵ 増額請求の場合
地代等や建物賃料について、貸主から増額請求を行う場合、まずは当事者間で協議をすることになり、協議が調わない場合には裁判手続をとることが必要となりますが、裁判手続に進む前に調停手続を経ることが必須とされています(調停前置主義)。
地代等や建物賃料の増額請求を受けた借主は、増額を認める裁判が確定するまでは、自らが相当と認める額の地代等や建物賃料を支払うことをもって足りますが(相当額の支払をしていれば債務不履行とはされない)、後日裁判で増額が確定し、既払金に不足があった場合には、その不足額に年1割の割合による利息を付して支払わなければなりません。
⑶ 減額請求の場合
地代等や建物賃料について、借主から減額請求があった場合も、まずは当事者間で協議をすることになり、協議が調わない場合には裁判手続がとられることになりますが、この場合も、裁判手続に進む前に調停手続を経ることが必須とされています(調停前置主義)。
貸主は、地代等や建物賃料の減額請求を受けた場合でも、減額を認める裁判が確定するまでの間は、自らが相当と認める額の地代等や建物賃料を請求することができますが(借主が当該請求額を支払わなければ債務不履行となる)、後日裁判で減額が確定し、既払金に超過があった場合には、その超過額に年1割の割合による利息を付して返還しなければなりません。
3 サブリース契約における注意点
サブリース契約においては、契約期間を長期としたうえで、最低賃料額保証特約や賃料自動増額特約が設けられ、貸主(建物オーナー)は、それら特約を前提に契約を締結している場合が多いと思います。
しかし、サブリース契約も法的には建物賃貸借契約であり、特約により建物賃料の増減額請求権を完全に排除することはできないとするのが判例の立場です。そのため、最低賃料額保証等の特約が設けられている場合でも、借主(サブリース業者)から建物賃料の減額請求を行うことは可能となるため、貸主(建物オーナー)としては、契約締結に際して十分な注意が必要です。
(著者:弁護士 濱田)