「借地借家法を考える」④建物賃貸借契約の更新
1 はじめに
今回は、建物賃貸借の「更新」に纏わる事項について取り上げます。
建物賃貸借の更新に纏わる事項としては、更新の前提となる「建物賃貸借の存続期間」、更新方法における「合意更新」と「法定更新」、更新時に発生する「更新料」の問題等いろいろありますが、その内容は必ずしも正確に理解されていないように思われますので、この機会に改めて整理していただければと思います。
2 建物賃貸借の存続期間
実務上、(普通)建物賃貸借の存続期間は2~3年とされている場合が多いと思います。民法上、賃貸借の存続期間は20年(改正法が施行される令和2年4月1日以降は50年)が上限とされていますが、平成11年の借地借家法改正により、建物賃貸借には民法の当該規定が適用されないものとされており、現在は建物賃貸借に存続期間の上限がなく、いくらでも長期の存続期間を定めることが可能となっています。
他方、借地借家法上、存続期間を1年未満とする建物賃貸借は、期間の定めがないものとみなされるため、前回取り上げた「定期建物賃貸借等」の場合を除き、建物賃貸借の存続期間は最短でも1年以上とする必要があります。
3 合意更新と法定更新
⑴ 合意更新
存続期間の定めがある建物賃貸借では、前回取り上げた「定期建物賃貸借等」の場合を除き、存続期間満了時に更新の問題が生じることになります。更新を当事者の合意により行うのが「合意更新」ですが、合意更新には、更新時に改めて契約書等の取交しを行う場合と、更新前の契約書等において「期間満了の〇ヶ月前までに解約の申入れがない場合、従前と同一の内容・期間にて、自動的に更新する。 」といった定めをしておく場合があり(自動更新)、いずれも合意更新ということになります。
⑵ 法定更新
合意更新がないことが前提ですが、当事者が存続期間満了の1年~6ヶ月前までに相手方に対して同一条件での更新をしない旨の通知をしなかったり、当該通知をした場合でも存続期間の満了後も賃借人が建物使用を継続し賃貸人が遅滞なく異議を述べなかった場合には、従前の契約と同一の条件で建物賃貸借契約が更新されたものとみなされ、これを「法定更新」といいます。
法定更新の場合、契約内容は基本的に従前の契約と同一となりますが、存続期間は「定めがないもの」となり、以後更新の問題は生じないことになります。この点は、前記の自動更新の場合とは異なります。
4 更新料
合意更新の場合、契約上更新料に関する具体的な規定があり、当該規定に基づき更新料の請求がなされるのが一般的だと思います。
他方、法定更新の場合にも更新料の請求ができるのかについては、未だ議論のあるところですが、「法定更新の場合にも更新料を支払う旨の明確な規定がある」「更新料が賃料1~2ヶ月分程度で過大とはいえない」といった場合には、法定更新の場合でも更新料の請求が認められるとする考えが有力です。
5 おわりに
建物賃貸借の更新に纏わる事項はいろいろありますが、2~3年の存続期間を定めて建物を賃貸したものの、合意更新の手続がなされず法定更新となり、更新料の請求ができないままになっているというご相談がよくあります。
家主の立場から、継続的に更新料を確保してゆくためには、建物賃貸借契約では自動更新の定めをしておくべきということになるでしょう。
(著者:弁護士 濱田)