「サブリース問題」から考える賃貸経営
「サブリース問題」が一種の社会問題として取り上げられています。
「サブリース」とは、ハウスメーカーや不動産会社がオーナーから賃貸物件を一括して借上げ、入居者に転貸する手法で、入居者の有無に関わらず、約束した賃料を一定期間支払う(保証する)賃貸借の形態のひとつです。このようなことから一括借り上げ、家賃保証とも言われています。サブリース契約によってオーナーは一定期間、一定額の賃料を受け取ることができ、安定した賃貸経営ができる。と、言われてきました。また、金融機関もサブリースによる賃料収入を裏付けに事業収支を評価し、資金を融資してきました。いわば、サブリースは賃貸物件の建築を受注するために考え出された、安心を売るための手法だったのです。
しかし昨今、約束された賃料が支払われない、あるいは当初、保証した賃料が減額された。加えて、減額に応じなければ、サブリース契約を解除する。などと半ば脅しをかけられているといった問題が増加しています。この問題によって、賃貸事業計画が狂うどころか、場合によってはローンの返済に窮するオーナーも少なくないようです。この問題に対し、事業者は、「賃料の変更については契約書に記載している。説明している。」とし、これに対し、オーナーは「当初の説明が不足している。聞いていない、納得いかない。」としながらも、最終的にはオーナーが事業者の条件変更を呑まざるを得ないというのが多くの現実です。
事業者の立場で考えますと、事業である以上、利益を出さなければいけません、その原資である賃料が下落したり、空室などが増えてきたりした場合、オーナーに対する賃料の減額請求は、ある意味、やむを得ない要求と言えるでしょう。また、最近では、事業者自らのリスクを軽減する為、「新規募集時、空室時などの一定期間は保証賃料を免責する」というような内容も増えてきました。事業者の気持ちも分からなくもありませんが、これでは、空室時も安定した賃料を得られる、というサブリース本来の目的から少しずつずれてしまっているように思えます。現在の賃貸住宅市場をみれば、相続税増税に端を発した賃貸住宅の過剰な供給に伴い、空室は増加の一途をたどり、賃貸経営には不安な要素ばかりです。このようなことから、事業者としても、賃料の減額や、空室のリスクをできるだけオーナー負ってもらいたいのが本音です。まさしくサブリース問題は起こるべくして起きたと言えるでしょう。
もはや賃貸経営は限られた入居者を奪い合うゲームと化し、サブリースによって、サブリースによらずとも、安定した賃貸経営ができるとは限りません。ましてや「うちだけ満室経営」という幻想は捨てなければいけません。
これからは、サブリースに頼らなければ賃貸経営に不安があるような事業は見直すという判断も必要です。何を建てるか、どこで建てるか、というより前に「建てるか、建てないか」ということを真剣に考えること、そして、オーナーの立場で一緒に考えるコンサルタントの存在がより重要になってきます。
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(著者:不動産コンサルタント 伊藤)