不公平な路線価を考える
路線価とは相続税、贈与税を算出する際の基礎となる1㎡あたりの土地の価格で、国税局が毎年1月1日時点の価格を7月上旬に発表します。
全国平均では3年連続の上昇とのことですが、首都圏は上昇、地方圏は横ばい、一部下落となっています。この傾向はここ数年変わりませんし、今後もこの傾向はしばらく続くでしょう。要するに地価の2極化は年々顕著になり、今後も続くということです。この状況で、全国を平均すること自体が、ほとんど意味が無いともいえますね。
相続税の観点から考えますと、路線価の上昇した都市部に不動産を保有する人は相続税負担が増えた、と、一義的には言えると思いますが、路線価と時価は連動しているため、資産価値の観点からは、資産価値(換金価値)が上がった、とも考えられるでしょう。
路線価と時価の関係とその傾向は、路線価の高い地域、上昇した地域、いわゆる都市部と、路線価の低い地域、横ばい、もしくは下落の地方部(郊外)では大きく異なります。大まかにいうと前者は路線価の1.2倍から1.5倍程度の時価であるのに対し、後者は路線価と同等、あるいは路線価以下の時価という傾向が見られます。これは時価の変動に対して、評価は後追いであるこということが主な原因のひとつです。
この傾向を踏まえて、改めて相続税と時価のことを考えますと、都市部に不動産を保有している人は、時価に対して相続税は過少に評価されるのに対して、地方部(郊外)に不動産を保有している人は、時価より相続税が過大に評価されているといえます。極端な例ですが、前者は不動産時価3億円なのに対し、相続税評価額は2億円、後者は不動産時価2億円なのに対し、相続税評価額は2.5億円という現象が起きているのです。まさに、相続税の観点から考えますと都市部に不動産を保有している人には相続税は有利に働き、地方部(郊外)に不動産を保有している人には相続税は不利に働いているといっても過言ではありません。このように2極化が顕著な昨今、不動産を保有している場所によって相続税に大きな不公平が生まれているといえるでしょう。
また、万一の場合の相続税納付の場面でも、都市部では相続税評価額以上で不動産を売却し、納税できるのに対し、地方部では相続税評価額では売却できず、納税に苦慮するという現象も多く見受けられます。
このような事から、地方部に不動産を保有している人の相続対策として、地方部から都市部に不動産を組み替える方法や、相続税の納付方法として、不動産の売却ではなく、相続税評価額で納付できる不動産の物納ができるよう準備をしておくという方法が考えられます。
しかし、地方部から都市部に不動産を組み替える動きが増加することによって、更に2極化、不公平感が進むのはいうまでもありませんし、相続税評価額で売れない不動産を、物納によって国が引き取るというのも、なんとも皮肉な話です。
路線価の発表を受けて、夏休みにはご家族で相続のことを少しお話してみるのもいいかもしれません。
(著者:不動産コンサルタント 伊藤)