「借地借家法を考える」②定期借地権
1 はじめに
今回は、借地借家法で規定される「定期借地権等」について取り上げます。
定期借地権等は、平成4年施行の借地借家法により導入されたもので、存続期間の満了後に土地の返還(明渡し)が容易となる制度として既にお馴染みの方が大半だと思いますが、平成11年と平成19年に法改正があり、その内容は必ずしも正確に理解されていないという印象もありますので、この機会に改めて整理していただければと思います。
2 定期借地権等
⑴ 定期借地権
「定期借地権」とは、存続期間を50年以上とすることを前提に、通常の借地権(普通借地権)とは異なり、その設定契約において「契約更新」、「建物築造による存続期間の延長」、「建物買取請求権」を排除する旨の特約をした借地権をいいます。
定期借地権を設定する場合、書面による合意が必要ですが、公正証書によることは必須ではありません。
⑵ 事業用定期借地権等
「事業用定期借地権」とは、専ら事業の用に供する建物(居住用建物を除く)所有を目的とし、存続期間を30年以上50年未満とすることを前提に、その設定契約において「契約更新」、「建物築造による存続期間の延長」、「建物買取請求権」を排除する旨の特約をした借地権をいいます。
「事業用借地権」も、専ら事業の用に供する建物(居住用建物を除く)所有を目的として設定されますが、存続期間を10年以上30年未満とした借地権のことで、「契約更新」、「建物築造による存続期間の延長」、「建物買取請求権」を排除する特約がなくても、これら借地権者保護規定は借地借家法上当然に否定されるものとされています。
事業用定期借地権や事業用借地権の設定契約は、定期借地権の場合とは異なり、公正証書によることが必須です。
⑶ 建物譲渡特約付借地権
定期借地権に類するものとして、「建物譲渡特約付借地権」があります。借地権の設定をする際、設定後30年以上を経過した日に借地上の建物を借地権設定者が買取る旨の特約を結んでおくもので、借地権設定者が借地上の建物所有権を取得することで借地権が混同により消滅することになります。
この建物譲渡特約は、前述の定期借地権や事業用定期借地権の設定契約でもすることができ、その場合は書面ないし公正証書によることが必要となりますが、その他の場合には必ずしも書面によることは求められていません。
なお、建物譲渡特約付借地権を設定した場合、予定された建物買取日に借地権は消滅することにはなりますが、対象建物を使用する元の借地権者が請求した場合には、建物賃借権が新たに設定されたものとみなされ、元の借地権者の建物使用の継続が認められることになります。
⑷ 普通借地権から定期借地権等への変更
普通借地権を定期借地権等に変更することは、「契約更新」等の借地権者保護規定に反して借地権者に不利な規定(特約)を定めることになり、無効となるとされています。
他方、既存の普通借地権設定契約を合意解除して改めて定期借地権等を設定することは認められるとされていますが、借地権者に十分な説明なく合意解除がなされたような場合には、「錯誤」や「公序良俗違反」として合意解除が無効とされる可能性もありますので、注意が必要です。
3 まとめ
存続期間等の満了後に土地の返還(明渡し)が容易となる定期借地権等には、幾つかの種類がありますが、事業用借地権・事業用定期借地権ではより短い存続期間での設定が可能となっていますので、土地の有効利用といった観点からも、積極的に活用いただければと思います。
(著者:弁護士 濱田)