道路と資産価値
建築基準法では、建築物の敷地は幅4m以上の道路に2m以上接していなければならないとされています。
これを接道義務と呼び、都市の防災上、安全上の観点から定められたルールです。
また、ここでいう道路というのは建築基準法で定められた道路でなければならず、見た目や形式で判断されるものではないため、行政で確認する必要があります。誰が見ても道路と思われるものが建築基準法上の道路として扱われていない場合や、逆にどう見ても道路ではないだろうというものが道路として扱われている場合もありますのでよくよく注意が必要です。また、道路の幅が4mに満たない場合でも、敷地の一部を提供することにより建築可能となるケースもありますので道路に関する調査は非常に重要です。
このように、接道義務を満たさない土地には建物が建てられないことになるため、資産価値はほとんどありません。また、接道義務を満たしていたとしても、道路の幅や種類によって資産価値は変わってきます。閑静な住宅街をイメージしていただくと分かりやすいと思いますが、道路幅が最低の4mより、6m、8mと広い方がその土地、街全体の資産価値は高くなります。
道路の種類で考えますと、公道か私道かによって、その土地の価値は変わってきます。
私道に接している土地の場合は、建物を建築する際に引き込まなければならない上下水道管やガス管などを整備する際に生じる道路の掘削工事に私道所有者の承諾が必要となります。これは、公共的な側面をもっている道路といえども、私道は個人の財産であるということから、変更を加える場合は所有者の承諾を必要とするという考え方です。
このようなことから、私道に接している土地を売却する場合には、購入した人が安心して私道の通行や掘削工事ができるように、売主が私道所有者から、無償通行と無償掘削の承諾を得ることを取引条件とすることが一般的です。言い替えれば、この私道承諾が得られなければ売却は難しいということになります。
私道承諾は、原則、私道所有者全員から得る必要がありますので、私道の所有者が複数いる場合は、承諾を得るために相当の時間とコストが必要となります。私道の一部を所有している場合は、お互い様という事で、他の私道所有者の承諾が比較的得やすいですが、まったくの第三者の場合は承諾を得る為に非常に神経をつかうことになります。また、相続などにより私道所有者が散逸したり、不明になったりしている場合は、更に時間とコストがかかります。特に、私道は固定資産税が非課税であり、相続税の評価もゼロとなるケースが多く、当事者としても財産として認識しづらいという特徴があるため、意識することなく、相続時に遺産分割の対象から漏れることもよく見受けられます。
これらの労力を考えるだけでも、私道に接している土地より、幅の広い公道に接している土地の方が資産価値が高いと言えるでしょう。
昨今、私道所有者による道路の封鎖などが問題となっております。これは私道の公共性と私有財産との考え方の歪みから生じている問題です。せめて固定資産税を非課税とする条件として、私道の無償通行、無償掘削の承諾を与えるという事にしてもよさそうなものですが、今後の制度の見直しを望みたいものです。
(著者:不動産コンサルタント 伊藤)