不動産を売りたい気持ちと買いたい気持ち、どちらが強いかで取引条件は大きく変わります。

売りたい気持ちの方が強ければ、買主は有利な条件を引き出せますし、反対に買いたい気持ちの方が強ければ売主は有利な条件を引き出すことが可能です。

取引条件は売買代金のほかに、手付金の額、引き渡しの時期や購入資金の調達に関する事項など、買主のお金にかかわる経済的な条件と、土地境界の確定、その他、前面道路が私道の場合などの通行、掘削の承諾など、売主が物件を引き渡すまでに整備すべき条件、物件引き渡し後の物件の不具合、欠陥についての売主の責任についての取り決めである契約不適合責任の範囲と期間の3つに分けられます。今回は売主の立場から売買条件について考えてみます。

 

 

経済的な条件のなかでも売りたい気持ち、買いたい気持ちが顕著に表れるのは売買金額ですが、手付金の額も少なからず売買の判断に影響します。

不動産売買において、手付金は解約手付とされ、買主による手付金放棄、売主による手付倍返しによって契約は解除可能です。したがって手付金の額が多いほど、万一解除した場合の損害が大きくなりますので、解除のリスクが少ないと言えるでしょう。また、買主が購入資金に銀行融資を用いる場合、融資が否認されたら契約を白紙とするローン特約が付されることが一般的ですので、自己資金で購入資金を調達する場合と比較すると、解除のリスクが少なからず伴います。

 

売主が引き渡し時までに整備する主な条件として土地の測量および隣接土地所有者との土地境界の確定、境界標の明示があります。

また、前面道路が私道の場合などは、私道所有者から私道の通行や、掘削の無償承諾を求められることも一般的です。これは、売主の意向だけで整備できるものではなく、隣接土地所有者や私道所有者の意向によって大きく変わりますので早めの整備着手が重要です。立地や規模などの物件の競争力によっては、あくまで現状での引き渡しを条件として、これらの整備のリスクや負担を買主にとってもらえるよう交渉することも検討の一つです。

 

物件引き渡し後の売主の負担として、契約不適合責任があげられます。これまで瑕疵担保責任と呼ばれていたもので、引き渡し後に物件の不具合があった場合の売主の責任です。土地の場合は地中埋設物や土壌汚染、建物の場合は主要構造部分の欠陥があげられます。欠陥を発見するまでにそれなりの期間が必要であるということと、期限を設けなければ売主の立場も常に不安定であるという事から、通常は引き渡し後2か月や3か月、半年などの期間を設け、その期間内に発見された不具合については売主にて責任をもって修復、改善するという事を約束します。しかしこの契約不適合責任も売主買主間で合意すれば免除することが可能です。

いずれも物件競争力がある場合の考え方ですが、物件の取得に悪戦苦闘しているディベロッパーなどには、売主に有利な取引条件として交渉する価値は十分あるかもしれません。

 

(著者:不動産コンサルタント 伊藤)