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賃貸経営

第9回 未払賃料の回収方法

1 はじめに

賃貸人にとって賃料の入金状況は重要な関心事ですが、賃料の未払が数ヶ月続くようになってくると、賃貸借契約の解除に加えて、未払賃料の回収を検討する必要が出てきます。

そこで今回は、未払賃料の回収方法についてご説明させて頂きます。

 

 

2 賃借人からの回収

⑴ 建物内の残置物売却

相当額の未払賃料について賃借人に催告しても支払われない場合は、賃貸借契約を解除し、さらに賃借人が任意に明渡しをしない場合は建物明渡請求訴訟を提起します。その際には、未払賃料も合わせて請求することが一般的です。

訴訟で認容判決が出ましたら、建物の明渡執行と同時に、未払賃料を回収するための動産執行(動産を差し押さえて換価する手続)を申し立てます。

建物の明渡執行では強制的に明渡しが実現されますが、建物内に価値のある動産が残っている場合は、これを差し押さえて換価し、売却代金から回収することができます。

一方、価値のある動産が存在しない場合は、執行不能により動産執行の手続は終了しますが、そのままでは明渡しが完了しないので、明渡執行の手続で売却されることになります。この場合、債権者(賃貸人)が自ら買い取り処分することが通常と思われます。

⑵ 強制執行

未払賃料について判決を取得すれば、強制執行の方法により、⑴の残置物以外にも、賃借人の財産(預金や給与等)を差し押さえて回収することができます。

また、物件の明渡しが既に完了しており、未払賃料だけ残っている場合は、支払督促という簡易な方法も考えられます。これも判決と同じ効力が認められるため強制執行が可能となります。

⑶ 不動産賃貸の先取特権

不動産の賃貸人は、賃借人の動産(土地や建物に備え付けられている動産や、土地の利用に供されている動産等)につき先取特権を有しているため、当該動産を競売にかけることによって、その売却代金から未払賃料を回収することができます。

先取特権は、建物内に持ち込まれた金銭、有価証券、貴金属等にも効力が及ぶとされています。この方法を実行するためには、訴訟提起して判決を取る必要はありませんが、先取特権の存在を証する書面等を提出する必要があります。

 

3 連帯保証人からの回収

連帯保証人に対しても、未払賃料の支払を求めて訴訟や支払督促を行うことができますので、財産があれば強制執行による回収が可能となります。

但し、連帯保証人の責任は無制限ではなく、賃貸人が長期に亘って未払賃料を放置し、漫然と未払額を増加させてきたような場合は、一定の範囲に責任が制限されることがあります。なお、令和2年4月施行の改正民法では、賃貸借契約時に連帯保証人の責任の上限額を記載することが必要とされています。

 

4 終わりに

賃料回収の方法としては上記のとおりですが、これらを実行するには時間や費用がかかる上、賃借人に財産がないために回収できないケースが多いのが実情です。そのため、事後的な回収を図るよりも、賃料の未払を事前に防止することが重要になってきます。

具体的には、契約時に賃借人や連帯保証人の審査を慎重に行うことが一つですが、審査が厳し過ぎると賃借人が確保できないためバランスを考慮する必要があります。あるいは、賃借人に保証料の負担がかかりますが、家賃債務保証会社を付けることもリスク回避のために有効です。

また、賃料の未払を放置しているとすぐに未払額が増えてしまい、賃借人も手に負えなくなってしまいますので、未払が発生した場合はすぐに督促することが重要です。

なお、賃料の消滅時効は基本的に5年とされていますので、未払賃料がある場合はお早めに対応策を検討されることをお勧めします。

 

(著者:弁護士 戸門)

 

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