今年もマンション市場は活況か?(先のことは深く考えない)
昨年もコロナに明け暮れた1年でしたが、不動産市況、特に戸建て住宅やマンションの販売は活況でした。
コロナ禍によってライフスタイル、ワークスタイルが変わったことによって自らの住まいを見直すきっかけになり住宅を購入する人が増えたようです。
新築、中古ともにマンション価格も上昇し、契約率も高い推移を維持しております。
そんな景気のいい話題とは裏腹に、老朽化マンション増加の問題が顕在化してきております。
国土交通省の推計によると2020年末時点でのマンション675万戸のうち、築40年を超えるマンションは103万戸あり、更に2040年には405万戸に増加するとの事ですがマンションは権利関係が複雑で、建て替えがなかなか進まないというのが現状です。
マンションの法律である区分所有法では所有者の4/5の賛同がなければ建て替え決議ができません。
建て替えを推進するためにこれを4/3にしようという動きもありますが、4/5でも4/3でも難しいのは変わりありません。建て替えの合意ができない一番の要因は、区分所有者それぞれの事情が異なるということです。
例えば、新築時に購入して住宅ローンを完済した人もいれば、数年前に購入して住宅ローンがまだ多く残っている人もいます。また、多くの収入がある人、年金暮らしの人、貯蓄がある人、ない人、子供の学費が必要な人、高齢な単身者、相続人である子や孫がいるかいないかなど、様々な事情の人が集まっているマンションの建て替えを多数決で纏めようということ自体、非常に無理があると言わざるを得ません。一戸建て住宅のように、お父さんの鶴の一声では建替えできないのです。
そもそも、分譲マンションは1棟の集合建物を不特定多数が共同で所有しているということを基本としたうえで、それぞれが居住している部屋の権利を区分し、その区分した権利(区分所有権)を自由に使用、(居住する)収益、(賃貸する)処分、(売却する)することを認めたという特殊な権利形態ですので、色々な事情をもった所有者が入れ替わるのは当然であり防ぎようがありません。
従いまして、現実的には将来の建て替えは難しいという前提でマンションを購入する必要があります。
とは言いながらも、はるか数十年先の問題ですし、目の前の綺麗なモデルルームや窓からのビューに魅せられて、売主も買主もなんとなく目を瞑っているのが現状です。建て替えが難しいものを買ってどうする、というと身も蓋もありませんが、とりあえず現実の対応策として考えると、建て替えの問題が顕在化する前に買い替える、という自己中心的で消極的な対応しかありません。
将来の街づくりを考えれば、理想的には定期借地権を活用して50年、60年で権利が消滅するというように、所有権ではなく利用権として販売することが望ましいと考えます。
とは言いながら、私たちはせいぜい2~3年先のことは考えられても50年後のことまではなかなか想像力は働かないのが現実です。あまり先のことを憂えずに、先のことは、その時に考えればいいや、というくらいの方が豊かな人生が送れるかもしれません。
(著者:不動産コンサルタント 伊藤)