水害ハザードマップの説明追加と水害補償について
売買及び賃貸の契約締結前において、宅地建物取引業法により仲介業者は重要事項説明を行う義務があります。
これについて令和2年8月28日より、新たに水防法による水害ハザードマップを使用した水害リスクの説明が義務化されました。
重要事項説明というのは仲介業者が買主様や借主様に対して説明義務があるものですので、売主様や貸主様におかれましては今回の追加についてご存じではない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
新たに説明が必要になりました水害リスクは以下の通りです。
・洪水(川が堤防を超えたり決壊することによる被害)
・雨水出水(大雨によりマンホールなどの下水道から水が溢れて浸水する被害)
・高潮(台風などで海面が上昇することによる被害)
※地震による「津波」リスクについては東日本大震災後、既に追加済みです。
仲介業者は各市町村のホームページや役所からハザードマップを入手し、そのマップ上での対象物件を示してリスクの状況を説明しなければなりません。

近年は甚大な被害を及ぼす水害が頻発していますので、こういった情報が求められることも多くなり、重要事項としての追加は十分理解できるところですが、この追加によって売主様・貸主様への影響があるのか注目すべきところです。
中にはこの説明如何によって契約をキャンセルする方がひょっとしたらいらっしゃるかもしれません。
単に不安を煽るような説明のみでは本来の趣旨とは異なることになります。
今回の追加説明で本当に重要なことは、水害リスクの説明はもちろんのこと、
・水害が発生するリスクがあるので普段から防災準備を怠らないこと、
・いざ水害が発生した場合の避難場所、避難経路の確認を説明し危機管理を持ってもらうことであると考えます。
災害大国になりつつあることを否定できない時代であるからこそ、どの地域にお住まいであっても防災意識を日頃から持つことが様々な自然災害による被害を最小限に留めることへと繋がるからです。
自然災害に関する新たな動きがあるたびに私が思うこととして、貸主様におかれましては火災保険内容の確認を改めてお願いしたいです。
火災保険というのは大きく分けて下記の6つのリスクを補償します。
1.火災
2.風災、雪災
3.水ぬれ(給排水設備の破損や上階からの水漏れ
事故によるもの)
4.盗難
5.水災(水害による浸水)
6.破損、汚損(1~5の原因を除いた突発的事実による被害)
※津波は地震により発生するものなので地震保険に加入する必要があります。
上記の内、5と6を追加すると保険料がグッと上がってしまうため、水災を付帯していない貸主様が少なからずいらっしゃいます。
これまでは川や海の近くでなければ付帯する必要はないのでは?という考え方もありましたが。近年は集中豪雨により排水が間に合わず冠水するケースを都市部でも目にするようになりました。現在はオールリスクを補償する保険内容にされた方が安心かと思われます。
終わりに、自然災害の規模は大きくなっていく中での水害ハザードマップの説明は売主様・貸主様にとって正直なところ歓迎すべき事項でないのかもしれませんが、「防災意識を高める」という本来の趣旨をご理解いただき、考え得る対策に取り組まれるようお願いいたします。
(著者:鈴木)